オーストラリアの思春期児(15~18歳)に対するB群髄膜炎菌ワクチン4CMenBの接種は、B群を含む病原性髄膜炎菌の保菌に対して、識別可能な効果はないことが示された。オーストラリア・アデレード大学のHelen S. Marshall氏らが、237校の学生、約3万5,000例を対象に行った無作為化試験で明らかにした。4CMenBは、侵襲性B群髄膜炎菌疾患を予防するとして承認された新規の組み換え型蛋白ベースのワクチンだが、伝播を予防する役割、さらには住民(集団)免疫効果があるのかについては明らかになっていなかった。NEJM誌2020年1月23日号掲載の報告。
接種群と対照群の病原性髄膜炎菌の保菌率を比較
研究グループは2017年4月~6月に、サウスオーストラリアの学校237校で、10~12年生(15~18歳)の生徒を対象にクラスター無作為化試験を開始した。試験の対象を、学校単位で無作為に2群に分け、一方には4CMenBをベースラインで接種し(接種群)、もう一方の群にはベースラインから12ヵ月時点で接種した(対照群)。
主要アウトカムは、10および11年生の時点の病原性髄膜炎菌(A群、B群、C群、W群、X群、Y群のいずれか)の口腔咽頭保菌率とし、PorA(ポリン蛋白Aをコード)および病原性髄膜炎菌の遺伝子群のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査により同定した。副次アウトカムは、すべての病原性髄膜炎菌および各病原性遺伝子群の保菌率や感染などとした。また、ベースライン時に保菌のリスク因子を評価した。
保菌率は同等、接種群2.55%、対照群2.52%
試験登録者は、10、11年生が合計2万4,269例、12年生が1万220例だった。
12ヵ月時点で、病原性髄膜炎菌の保菌率は、接種群2.55%(1万2,746例中326例)、対照群2.52%(1万1,523例中291例)で差はみられなかった(補正後オッズ比[OR]:1.02、95%信頼区間[CI]:0.80~1.31、p=0.85)。
副次アウトカムの保菌率についても、両群で有意差は認められなかった。
なお、ベースライン時の病原性髄膜炎菌保菌のリスク因子として、高学年であること(12年生の10年生に対する補正後OR:2.75、95%CI:2.03~3.73)、上気道感染症に罹患していること(補正後OR:1.35、95%CI:1.12~1.63)、喫煙(1.91、1.29~2.83)、水タバコ(1.82、1.30~2.54)、パブまたはクラブに通っていること(1.54、1.28~1.86)、濃厚キス(1.65、1.33~2.05)などが明らかになった。
ワクチンの安全性に関する懸念は特定されなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)