4つの形態の日焼け止め製品に含まれる6種の有効成分について、いずれも体内に吸収されて血中に移行し、さらなる安全性研究に進む基準となる米国食品医薬品局(FDA)の最大血漿中濃度閾値(0.5ng/mL)を上回ることが、米国・FDAのMurali K. Matta氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年1月21日号に掲載された。FDAによる既報のパイロット研究では、日焼け止めの4種の活性成分(アボベンゾン、オキシベンゾン、オクトクリレン、エカムスル)の体内吸収が報告されている。他の活性成分の体内吸収を確認するとともに、FDAの基準値である0.5ng/mLを上回る迅速な体内曝露を評価する研究が求められていた。
日焼け止め6種の活性成分を4形態で比較する無作為化試験
研究グループは、日焼け止めの6種の有効成分(アボベンゾン、オキシベンゾン、オクトクリレン、ホモサレート、オクチサレート、オクチノキサート)の体内吸収と薬物動態を評価する目的で、4つの形態(ローション、エアロゾルスプレー、非エアロゾルスプレー、ポンプスプレー)の製品を比較する無作為化試験を実施した(米国FDAの助成による)。
本研究は、2019年1月~2月の期間に単一の施設で行われた。健康な48人を対象とし、4つの形態の日焼け止め製品の塗布を受ける群に、12人ずつ無作為に割り付けられた。
日焼け止め製品は、4日間で13回塗布された。第1日に体表面積の75%に2mg/cm2が塗布され、第2~4日には同じ用量を1日に4回、2時間ごとに塗布された。個々の参加者から21日間で34の血液サンプルを採取し評価した。
主要アウトカムは、第1~21日における日焼け止めの有効成分の1つであるアボベンゾンの最大血漿中濃度とした。副次アウトカムは、第1~21日における日焼け止めの6種の有効成分であるオキシベンゾン、オクトクリレン、ホモサレート、オクチサレート、オクチノキサートの最大血漿中濃度であった。
日焼け止めの全活性成分が第1日の単回塗布で閾値を上回る
48人のベースラインの平均年齢は38.7(SD 13.2)歳で、24人(50%)が女性であった。23人(48%)が白人、23人(48%)がアフリカ系米国人、1人(2%)がアジア人、1人は人種/民族が不明だった。
日焼け止めの6種の有効成分の最大血漿中濃度の幾何平均は、いずれも0.5ng/mLを超えており、焼け止めのすべての活性成分単回塗布後の第1日に、このFDAの閾値を上回った。
第1~21日におけるアボベンゾンの最大血漿中濃度幾何平均(変動係数[%])は、ローションが7.1ng/mL(73.9%)、エアロゾルスプレーが3.5ng/mL(70.9%)、非エアロゾルスプレーが3.5ng/mL(73.0%)、ポンプスプレーは3.3ng/mL(47.8%)であった。また、第1日はそれぞれ1.6ng/mL(49.0%)、1.2ng/mL(90.6%)、1.0ng/mL(65.2%)、0.7ng/mL(64.5%)で、第4日は7.1ng/mL(73.9%)、3.5ng/mL(70.9%)、3.5ng/mL(73.0%)、3.1ng/mL(40.3%)だった。
第1~21日のオキシベンゾンの最大血漿中濃度幾何平均(変動係数[%])は、ローションが258.1ng/mL(53.0%)、エアロゾルスプレーが180.1ng/mL(57.3%)であり、オクトクリレンはローションが7.8ng/mL(87.1%)、エアロゾルスプレーが6.6ng/mL(78.1%)、非エアロゾルスプレーが6.6ng/mL(103.9%)で、ホモサレートはエアロゾルスプレーが23.1ng/mL(68.0%)、非エアロゾルスプレーが17.9ng/mL(61.7%)、ポンプスプレーが13.9ng/mL(70.2%)、オクチサレートはエアロゾルスプレーが5.1ng/mL(81.6%)、非エアロゾルスプレーが5.8ng/mL(77.4%)、ポンプスプレーが4.6ng/mL(97.6%)、オクチノキサートは非エアロゾルスプレーが7.9ng/mL(86.5%)、ポンプスプレーが5.2ng/mL(68.2%)であった。
探索的評価では、日焼け止めの4つの形態の製品のすべての活性成分は半減期が長いことが示された(平均値の範囲:27.3~157.4時間)。
日焼け止め成分による重篤な薬剤関連の有害事象の報告はなかった。最も頻度の高い有害事象は皮疹であり、14例に認められた。
著者は、「この結果は、日焼け止めの使用は控えるべきと示唆するものではない」と指摘し、「これらの知見の臨床的意義を検証するために、さらなる検討を要する」としている。
(医学ライター 菅野 守)