オゾンが10μg/m3増加すると、死亡の相対リスクは0.18%上昇し、大気質基準(air quality standards)がより厳格であれば、オゾン関連死は低下する可能性があることが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAna M. Vicedo-Cabrera氏らの検討で示された。地表オゾンと死亡との短期的な関連の研究の多くは、測定場所の数が少なく、地理的地域が限定的で、さまざまなデザインやモデル化の方法を用いて行われてきたという。ほとんどの研究が、地表オゾンと死亡には関連があるとしているが、結果は不均一であり、統計学的な検出力は限定的で研究間にも差異があるため、さまざまな国や地域での重要性の高い比較は困難とされる。BMJ誌2020年2月10日号掲載の報告。
日本の45都市を含む時系列研究
本研究は、オゾン曝露に関連する短期的な死亡リスクと死亡率の増加の評価を目的とする2段階時系列研究である(英国医学研究会議[MRC]などの助成による)。
Multi-Country Multi-City(MCC)Collaborative Research Networkのデータベースから、1985~2015年の20ヵ国406都市(2011~15年の日本の45都市を含む)のデータを抽出した。研究期間内に各都市で記録された死亡例のデータを用いて、1日当たりの総死亡率を評価した。
平均期間13年における406都市の合計4,516万5,171件の死亡について解析した。
国別で0.06~0.35%の幅、日本は0.20%
オゾン曝露と死亡リスクには関連性が認められ、当日と前日のオゾンの平均10μg/m
3の増加により、全体の死亡の相対リスクは0.18%上昇した(相対リスク:1.0018、95%信頼区間[CI]:1.0012~1.0024)。
この相対リスクの上昇には、参加国間にある程度の異質性が認められた(I
2=29.8%、Cochran Q:p<0.001)。英国(相対リスク:1.0035)、南アフリカ共和国(1.0027)、エストニア(1.0023)、カナダ(1.0023)でリスクの上昇が大きかったのに対し、オーストラリア、中国、チェコ、フランス、ドイツ、イタリア、日本(1.0020)、韓国、スウェーデン、スイス、米国は1.0014~1.0020の範囲で近似しており、ギリシャ(1.0011)、メキシコ(1.0008)、ポルトガル(1.0011)、スペイン(1.0006)、台湾(1.0010)はリスクの上昇の割合が小さく、不明確だった。
最大バックグラウンド濃度(70μg/m
3)を超えるオゾンへの曝露による短期的な死亡率の上昇は0.26%(95%CI:0.24~0.28)であり、これは406都市全体で年間8,203件(3,525~1万2,840)の死亡数の増加に相当した。また、WHOガイドラインの基準値(100μg/m
3)を超えた日に限定しても、死亡率の上昇は0.20%(95%CI:0.18~0.22)と実質的に残存しており、これは年間6,262件の死亡数の増加に相当した。
さらに、大気質基準の閾値が高くなるに従って、死亡率の上昇の割合は、欧州(欧州連合指令:120μg/m
3)が0.14%、米国(米国環境大気質基準[NAAQS]:140μg/m
3)が0.09%、中国(中国環境大気質基準[CAAQS]のレベル2:160μg/m
3)は0.05%と、漸進的に低下した。
著者は、「これらの知見は、国内および国際的な気候に関する施策の中で策定された効率的な大気清浄介入や軽減戦略の実施と関連がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)