オゾン(O3)やPM2.5などの大気汚染物質への長期曝露と肺気腫増大の関連が定量的に明らかにされた。米国・ワシントン大学のMeng Wang氏らが2000~18年にかけて米国内6都市部で行ったコホート研究の結果で、JAMA誌2019年8月13日号で発表した。歴史的には、大気汚染物質は心血管および呼吸器疾患と関連することが示されているが、当代の大気汚染物質への曝露が肺気腫と関連しているかは明らかになっていなかった。
米国6都市で約7,000例を追跡し肺気腫率の変化を調査
本検討で研究グループは、O
3、PM
2.5、窒素酸化物(NO
x)、ブラックカーボンへの曝露と肺気腫率の変化の長期関連を調べることを目的とした。肺気腫の評価は、CT画像診断と肺機能検査に基づいた。
米国6都市(ウィンストン・セーラム、ニューヨーク、ボルティモア、セントポール、シカゴ、ロサンゼルス)で行われたMulti-Ethnic Study of Atherosclerosis(MESA)Air and Lung Studiesの被験者を包含してコホート試験を実施。対象者は、2000年7月~2002年8月に集められた45~84歳の成人6,814例と、その後に追加された2005年2月~2007年5月に集められた257例が含まれた。最終フォローアップは2018年11月。
コホート特異的モニタリングが組み込まれている検証された空時間的モデルを用いて、居住地に特異的な大気汚染物質(O
3、PM
2.5、NO
x、ブラックカーボン)を算出し、1999年からフォローアップ終了までの間測定した。
主要評価項目は、肺気腫率(Hounsfield単位-950未満の肺ピクセルパーセンテージで定義)。被験者は2000~07年に心臓CTスキャン評価を、2010~18年に同一領域の肺CTスキャンの評価を最高5回受けた。また、2004~2018年に肺機能検査を最高3回受けた。
肺気腫率、10年間で平均0.58ポイント上昇
被験者計7,071例(補充時の平均年齢60歳[範囲:45~84]、男性3,330例[47.1%])において、5,780例がベースライン調査時~フォローアップ期間中の大気汚染物質曝露の評価を受け、少なくとも1回のフォローアップCTスキャンを受けた。また、2,772例が少なくとも1回の肺機能検査を受けた。フォローアップ期間の中央値は10年であった。
肺気腫率中央値はベースラインでは3%であったが、10年間で平均0.58ポイント上昇した。
フォローアップ期間中、PM
2.5とNO
xの平均環境濃度は一貫して低下したが(O
3については認められなかった)、ベースラインのO
3、PM
2.5、NO
x、ブラックカーボンの環境濃度と、10年間での肺気腫率上昇との有意な関連が認められた。O
3は0.13/3ppb(95%信頼区間[CI]:0.03~0.24)、PM
2.5は0.11/2μg/m
3(95%CI:0.03~0.19)、NO
xは0.06/10ppb(95%CI:0.01~0.12)、ブラックカーボンは0.10/0.2μg/m
3(95%CI:0.01~0.18)であった。
フォローアップ期間中のO
3とNO
xの環境濃度は、肺気腫率上昇と有意に関連した。PM
2.5については認められなかった。
ベースラインとフォローアップ期間中のO
3の環境濃度は、10年間での1秒量の低下と有意に関連していた。ベースラインでは13.41mL/3ppb(95%CI:0.7~26.1)、フォローアップ中は同18.15mL/3ppb(1.59~34.71)であった。
(ケアネット)