授乳によるヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の母子感染を減らす効果的な対策が、貧困国で緊急に求められている。米国・ジョンズホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のNewton I. Kumwenda氏らは、乳児に対する抗レトロウイルス薬の予防的投与の効果を検証した結果、ネビラピン(商品名:ビラミューン)またはネビラピン+ジドブジン(商品名:コンビビル、レトロビルカプセル)の長期投与によって、乳児のHIV-1感染症を有意に減らすことができると報告した。NEJM誌2008年7月10日号(オンライン版2008年6月4日号)より。
マラウイ共和国のHIV 感染女性の乳児で比較試験
世界最貧国の一つであるアフリカのマラウイ共和国で、同国最大の都市Blantyreに居住し、子供を母乳で育てるHIV-1感染女性を無作為第III相試験に登録。乳児は出生した時点で下記3つの投薬計画の1つに無作為に割り付けた。
(1)ネビラピン単回投与と1週のジドブジン投与(対照群)
(2)(1)に加えて、ネビラピン連日予防的投与を14週間に延長(長期ネビラピン群)
(3)(2)に加えてジドブジンの連日予防的投与も14週間に延長(長期二重予防群)
対象児は出生時、DNAポリメラーゼ連鎖反応法でHIV-1陰性だった者。その後のHIV-1感染症のリスクをKaplan-Meier分析によって評価した。対象児は3,016例。主要エンドポイントは9ヵ月時点におけるHIV-1推定感染率。
長期予防投与でHIV-1推定感染率はほぼ半減
対照群は、生後18ヵ月~6週間のHIV-1感染率が一貫して高かった。
9ヵ月時点推定感染率は、対照群10.6%、長期ネビラピン群5.2%(P<0.001)、長期二重予防群6.4%(P = 0.002)。2つの長期予防群に有意差はなく、長期に予防的に投与することで、感染率が有意に減っていた。
各群間の授乳頻度に有意差はない。
有害事象に関しては、長期二重予防群の乳児に、試験薬に関連すると思われる事象(主に好中球減少症)の件数が有意に増加していることがみられている。
(武藤まき:医療ライター)