前立腺がん患者に対する根治目的の手術や放射線療法前に行う病期分類のための画像検査について、新規の画像診断法であるガリウム-68・前立腺特異的膜抗原(PSMA)11を用いたPET-CT検査は、従来のCTと骨スキャニングの組み合わせ検査に比べ精度が優れており、代替検査として適切であることが示された。オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのMichael S. Hofman氏らが、302例を対象に行った、第III相の多施設共同無作為化比較試験の結果で、Lancet誌オンライン版2020年3月22日号で発表された。従来のCT+骨スキャニングでは、ハイリスクの限局性前立腺がんの病期分類の感度が不十分であることが指摘されていた。
オーストラリアの10病院で302例を対象に無作為化試験
研究グループは、PSMA PET-CTが、画像診断の精度を改善し治療に影響を及ぼすかどうかを調べる検討を行った。オーストラリアの10病院で、生検によりハイリスクな前立腺がんと確定診断された男性患者を集めて試験を行った。
被験者を無作為に2群に割り付け、一方には従来のCT検査と骨スキャニングを、もう一方の群にはPSMA PET-CT検査を実施した。初回の画像検査は無作為化後21日以内に行われ、遠隔転移が3ヵ所以上認められない場合には被験者はクロスオーバーし、もう一方の画像検査を行った。
主要アウトカムは、初回画像診断による骨盤リンパ節または遠隔転移の検出精度で、6ヵ月後の病理組織や画像、生化学検査など、事前に規定した基準を用いて受信者動作特性(ROC)曲線で定義した。
PSMA PET-CT群、感度85%、特異度98%
2017年3月22日~2018年11月2日に339例が適格性の評価を受け、302例(従来画像検査群152例[50%]、PSMA PET-CT群150例[50%])が無作為化を受けた。
追跡評価を行った295例(98%)のうち、87例(30%)で骨盤リンパ節または遠隔転移が認められた。検査精度は、従来画像検査群65%(95%信頼区間[CI]:60~69)に対して、PSMA PET-CT群92%(88~95)と27%(95%CI:23~31)高かった(p<0.0001)。
従来画像検査群はPSMA PET-CT群と比べて、感度(38%[24~52]vs.85%[74~96])、特異度(91%[85~97]vs.98%[95~100])のいずれも低かった。
サブグループ解析でも、骨盤リンパ節転移に関するROC曲線下面積が、従来画像検査群59%に対しPSMA PET-CT群91%(絶対差:32%[95%CI:28~35])、遠隔転移に関する同面積はそれぞれ74%と95%(同:22%[18~26])であり、PSMA PET-CT群の精度の優越性が示された。
初回従来画像検査群は、同PSMA PET-CT群に比べ、その結果が治療方針の変更につながる割合は低く(23例[15%、95%CI:10~22]vs.41例[28%、21~36]、p=0.008)、また結果が曖昧な割合が高かった(23%[17~31]vs.7%[4~13])。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)