監視療法で管理されている早期前立腺がん男性では、野菜摂取量を増やす行動的介入により、前立腺がんの進行リスクは抑制されないことが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のJ Kellogg Parsons氏らが行った「MEAL試験」(CALGB 70807[Alliance])で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年1月14日号に掲載された。米国臨床腫瘍学会の診療ガイドラインでは、野菜が豊富な食事は前立腺がんサバイバーの転帰を改善するとして積極的な摂取が推奨されている。一方、この推奨は専門家の意見や前臨床研究、観察研究のデータに基づいており、実践的な臨床エンドポイントに重点を置いた無作為化臨床試験は行われていなかった。
TTPを評価する米国の無作為化試験
本研究は、米国の91の泌尿器科および腫瘍内科クリニックが参加した無作為化第III相試験であり、2011年1月~2015年8月の期間に患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。
対象は、年齢50~80歳、ベースライン前の24ヵ月以内に前立腺生検(≧10コア)で前立腺腺がん(70歳未満:国際泌尿器病理学会[ISUP]のgrade group=1、70歳以上:ISUPのgrade group≦2)が証明され、ステージは≦cT2aで、血清前立腺特異抗原(PSA)<10ng/mLの男性であった。
被験者は、電話で毎日7サービング以上の野菜の摂取を促す行動的介入を受ける群(介入群)、または食事と前立腺がんに関する書面による情報を受け取る対照群に無作為に割り付けられた。
主要アウトカムは無増悪期間(TTP)とした。増悪は、PSA≧10ng/mL、PSA倍加時間<3年、フォローアップ中の前立腺生検で悪性度の進行(腫瘍量の増加またはグレードの進行)と定義された。
影響みられず、ただし検出力が不十分であった可能性も
478例(平均年齢64[SD 7]歳、平均PSA 4.9[2.1]ng/mL)が登録され、443例(93%、介入群226例、対照群217例)が主解析に含まれた。TTPイベントは245例(介入群124例、対照群121例)で発生した。
TTPには、両群間で差は認められなかった(補正前ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.75~1.24、p=0.76、補正後HR:0.97、95%CI:0.76~1.25、p=0.84)。24ヵ月時のKaplan-Meier法による無増悪率は、介入群が43.5%(95%CI:36.5~50.6)、対照群は41.4%(34.3~48.7)であった(群間差:2.1%、95%CI:-8.1~12.2)。
24ヵ月のフォローアップ期間中に積極的な前立腺がん治療へ移行した患者は、介入群が6例(2.7%)、対照群は4例(1.8%)であった(p=0.75)。治療期間のHRは1.38(95%CI:0.39~4.90、p=0.61)だった。
フォローアップ期間24ヵ月の時点で、ベースラインからの全体の野菜サービング数(/日)の平均変化は、介入群が2.01と、対照群の0.37に比較して有意に増加した(p<0.001)。また、アブラナ科野菜のサービング数(0.50 vs.0.01/日、p<0.001)および食事中の総カロテノイド量(9,687.87 vs.324.73μg/日、p<0.001)の平均変化も、介入群で増加の程度が大きかった。
著者は、「これらの知見は、監視療法で管理されている早期前立腺がん患者では、前立腺がんの進行を抑制する目的での野菜摂取量を増やす行動的介入の使用を支持しないが、臨床的に重要な差を同定するには、この試験の検出力は不十分であった可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)