急性冠症候群(ACS)を発症した2型糖尿病でHDLコレステロール値が低い患者に対し、標準治療に加え、選択的BET(bromodomain and extraterminal)タンパク質阻害薬であるapabetaloneを投与しても、主要有害心血管イベントリスクは有意には低下しないことが示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのKausik K. Ray氏らによる、多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果で、JAMA誌オンライン版2020年3月27日号で発表された。apabetaloneはブロモドメイン2をターゲットとしており、アテローム血栓症との関連経路に良好な影響をもたらす可能性があると見なされ、プール第II相試験データでは、臨床的アウトカムへの良好な影響が示唆されていたという。
心血管死、初回非致死的心筋梗塞・脳卒中いずれかの発生を比較
研究グループは、apabetaloneが主要有害心血管イベントを有意に抑制するかを調べるため、13ヵ国190ヵ所の医療機関を通じて試験を行った。
直近7~90日以内にACSを発症した2型糖尿病患者で、低HDLコレステロール値の18歳以上の患者を適格として、2015年11月11日に登録を開始。2018年7月4日に登録を終了し、2019年7月3日まで追跡調査した。
被験者は1対1の割合で2群に無作為化され、標準的治療に加えて、一方にはapabetalone(100mg、1日2回、1,215例)を、もう一方にはプラセボ(1,210例)をそれぞれ投与した。
主要アウトカムは、心血管死、初回非致死的心筋梗塞・脳卒中のいずれかが発生するまでの期間だった。
肝酵素値の上昇などで中断、apabetalone群が9.4%とより高率
無作為化された被験者2,425例の平均年齢は62歳、女性の割合は25.6%で、2,320例(95.7%)が、主要アウトカムについて完全な評価を受けた。
追跡期間中央値26.5ヵ月中に、主要エンドポイントは274件発生した。apabetalone群での発生は125件(10.3%)、プラセボ群は149件(12.4%)で同等だった(ハザード比:0.82、95%信頼区間 :0.65~1.04、p=0.11)。
一方で、試験を中断した被験者の割合は、apabetalone群114例(9.4%)、プラセボ群69例(5.7%)とapabetalone群で高率だった。その理由として肝酵素値の上昇(35例[2.9%]vs.11例[0.9%])などが含まれていた。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)