新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が重症化し呼吸不全を来すリスクについて、ゲノムワイド関連分析(GWAS)を行い調べたところ、3p21.31遺伝子座と9q34.2遺伝子座の変異との関連性が明らかになった。9q34.2遺伝子座は血液型の遺伝子座と一致しており、血液型A型の人は、他の血液型の人に比べ重症化リスクが1.45倍高く、一方で血液型O型の人は重症化リスクが0.65倍低いことが示されたという。COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2に感染した患者にばらつきがみられることから、ドイツ・Christian-Albrechts大学のDavid Ellinghaus氏らの研究グループ「The Severe Covid-19 GWAS Group」が、イタリアとスペインの患者を対象にGWASを行い明らかにした。NEJM誌オンライン版2020年6月17日号掲載の報告。
イタリア・スペインの7ヵ所の病院の患者を対象に試験
研究グループは、欧州におけるSARS-CoV-2流行の中心地、イタリアとスペインの7ヵ所の病院を通じて、COVID-19患者で重症化(呼吸不全)が認められた1,980例について、GWAS試験を行った。
品質管理や外れ値の除外後、イタリアでは患者835例とその対照1,255例、スペインではそれぞれ775例と950例について、最終的な解析を行った。
合計858万2,968個の一塩基多型を解析し、2つのケースコントロールパネルについてメタ解析を行った。
重症化リスク、A型は45%増、O型は35%減
COVID-19による呼吸不全との関連性(ゲノムワイドの有意水準でp<5×10
-8)を示す、2遺伝子座の2つの一塩基多型、3p21.31遺伝子座のrs11385942と9q34.2遺伝子座のrs657152を検出した(それぞれのオッズ比[OR]:1.77[95%信頼区間[CI]:1.48~2.11、p=1.15×10
-10]、1.32[95%CI:1.20~1.47、p=4.95×10
-8])。
3p21.31遺伝子座に関連する遺伝子は、
SLC6A20、
LZTFL1、
CCR9、
FYCO1、
CXCR6、
XCR1だった。
一方9q34.2遺伝子座は、血液型ABOの遺伝子座と一致した。血液型に特異的な解析の結果、A型の人の重症化リスクが他の血液型の人に比べ高率だった(OR:1.45、95%CI:1.20~1.75、p=1.48×10
-4)。一方で血液型O型の人は、他の血液型の人に比べ重症化リスクが低率だった(0.65、0.53~0.79、p=1.06×10
-5)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)