身体活動ガイドライン順守で、全死因・原因別死亡リスク減/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2020/07/15

 

 米国では、「米国人の身体活動ガイドライン2018年版(2018 Physical Activity Guidelines for Americans)」で推奨されている水準で、余暇に有酸素運動や筋力強化運動を行っている成人は、これを順守していない集団に比べ、全死因および原因別の死亡リスクが大幅に低いことが、中国・山東大学のMin Zhao氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2020年7月1日号に掲載された。本研究の開始前に、身体活動ガイドラインの推奨を達成することと、全死因死亡や心血管疾患、がんとの関連を評価した研究は4件のみで、その結果は一致していなかった。また、身体活動ガイドラインと他の原因別の死亡(アルツハイマー病や糖尿病などによる死亡)との関連を検討した研究は、それまでなかったという。

推奨順守で4群に分け、全死因と原因別の死亡を評価

 研究グループは、米国の成人を代表するサンプルを用いて、米国人の身体活動ガイドラインの2018年版で推奨されている身体活動と、全死因死亡および原因別死亡の関連を評価する目的で、地域住民ベースのコホート研究を行った(責任著者は山東大学から研究支援を受けた)。

 国民健康聞き取り調査(National Health Interview Survey)の1997~2014年のデータと、国民死亡記録(National Death Index)の2015年12月31日までのデータを関連付けた。成人(年齢18歳以上)47万9,856人が解析に含まれた。

 調査参加者の自己申告に基づき、1週間の余暇時間のうち有酸素運動および筋力強化運動に費やした時間を集計し、身体活動ガイドラインに従って、4つの群(運動不足、有酸素運動のみ、筋力強化運動のみ、有酸素運動+筋力強化運動)に分類した。

 主要アウトカムは、国民死亡記録から得た全死因死亡と原因別死亡とした。原因別死亡には、8つの疾患(心血管疾患、がん、慢性下気道疾患、事故/負傷、アルツハイマー病、糖尿病、インフルエンザ/肺炎、腎炎/ネフローゼ症候群/ネフローゼ)が含まれた。

有酸素+筋力強化運動で、死亡リスク40%減

 47万9,856人中7万6,384人(15.9%)が有酸素運動+筋力強化運動群、11万3,851人(23.7%)が有酸素運動群、2万1,428人(4.5%)が筋力強化運動群、26万8,193人(55.9%)は運動不足群に分類された。

 ガイドライン2018年版の推奨を完全に満たした成人の割合は、男女とも年齢が上がるに従って低下した。ベースラインの背景因子のすべてで、4つの群に有意な差が認められた。ガイドラインの推奨を満たさなかった運動不足群に比べ、これを満たした3群の参加者は、年齢が若く、男性や白人、未婚者、非喫煙者、少量~中等量の飲酒者が多く、学歴が高く、正常体重者が多く、慢性疾患を有する者が少なかった。

 追跡期間中央値8.75年の期間中に、5万9,819人が死亡した。このうち、1万3,509人が心血管疾患、1万4,375人ががん、3,188人が慢性下気道疾患、2,477人が事故/負傷、1,470人がアルツハイマー病、1,803人が糖尿病、1,135人がインフルエンザ/肺炎、1,129人が腎炎/ネフローゼ症候群/ネフローゼで死亡した。

 全死因死亡のリスクは、ガイドラインの推奨を満たさなかった運動不足群と比較して、筋力強化運動群が11%(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.85~0.94)、有酸素運動群が29%(0.71、0.69~0.72)低く、有酸素運動+筋力強化運動群(0.60、0.57~0.62)では、さらに大きな生存に関する利益が認められ、リスクは40%減少していた。

 また、同様の関連が、心血管疾患死(筋力強化運動群のHR:0.82[95%CI:0.74~0.92]、有酸素運動群:0.65[0.62~0.69]、有酸素運動+筋力強化運動群:0.50[0.46~0.56])、がん死(0.85[0.77~0.95]、0.76[0.73~0.80]、0.60[0.56~0.65])、慢性下気道疾患死(0.76[0.62~0.93]、0.42[0.37~0.47]、0.29[0.23~0.37])で観察された。

 著者は、「これらのデータは、ガイドラインで推奨されている身体活動の水準が、重要な生存上の利益と関連していることを示唆する」としている。

(医学ライター 菅野 守)

原著論文はこちら