1,000g未満の超低出生体重児において、非制限輸血は制限輸血と比較して、補正年齢24ヵ月時点の死亡または障害発生の確率を抑制しなかった。ドイツ・テュービンゲン大学病院小児科部門のAxel R. Franz氏らが、欧州36施設・1,013例の新生児を対象とした無作為化試験「ETTNO試験」の結果を報告した。超低出生体重児には赤血球輸血治療が行われるが、エビデンスに基づいた輸血閾値は確定されていない。先行研究では、制限輸血を受けた新生児で認知障害の発生率が高いことが示されていた。JAMA誌2020年8月11日号掲載の報告。
欧州36のNICUで1,013例を対象に無作為化試験
ETTNO(Effects of Transfusion Thresholds on Neurocognitive Outcomes of Extremely Low-Birth-Weight Infants)試験は、非制限輸血vs.制限輸血戦略の死亡または障害への影響を比較することを目的とし、欧州36ヵ所のレベル3/4の新生児集中治療室(NICU)で行われた。対象は生後72時間未満で出生体重400~999gの新生児。2011年7月14日~2014年11月14日に登録され、2018年1月15日までフォローアップを受けた。
対象新生児は無作為に、非制限輸血群(492例)または生後年齢と現在の健康状態に基づく閾値で輸血する制限輸血群(521例)に割り付けられた。
主要評価項目は、補正年齢24ヵ月時点で評価した死亡または障害(あらゆる認知障害、脳性麻痺、重度の視覚障害もしくは聴覚障害と定義)とした。副次評価項目は、主要評価項目の各項目、早産児合併症、発育などであった。
主要評価項目、副次評価項目ともに両群間で有意差みられず
無作為化を受けた1,013例(出生時在胎週数中央値26.3週[四分位範囲[IQR]:24.9~27.6]、女児509例[50.2%])において、928例(91.6%)が試験を完遂した。あらゆる輸血の介入は、非制限輸血群400/492例(81.3%)、制限輸血群315/521例(60.5%)で行われ、それぞれの輸血量中央値は40mL(IQR:16~73)vs.19mL(0~46)、週当たり平均ヘマトクリット値は、非制限輸血群で3%ポイント高かった。
主要評価項目の発生は、非制限輸血群200/450例(44.4%)、制限輸血群205/478例(42.9%)で、両群間で有意な差はなかった(絶対群間差:1.6[95%信頼区間[CI]:-4.8~7.9]、オッズ比[OR]:1.05[95%CI:0.80~1.39]、p=0.72)。
また、副次評価項目の死亡(8.3% vs.9.0%、絶対群間差:-0.7[95%CI:-4.3~2.9]、OR:0.91[95%CI:0.58~1.45]、p=0.70)、認知障害(37.6% vs.34.4%、3.1[-3.3~9.6]、1.12[0.83~1.51]、p=0.47)、脳性麻痺(4.3% vs.5.6%、-1.3[-4.2~1.5]、0.75[0.40~1.40]、p=0.37)のいずれも有意差は示されなかった。
手術を要した壊死性腸炎の発生は、非制限輸血群20/492例(4.1%)vs.制限輸血群28/518例(5.4%)、気管支肺異形成症はそれぞれ130/458例(28.4%)vs.126/485例(26.0%)、早産児網膜症で治療を要したのは41/472例(8.7%)vs.38/492例(7.7%)であった。
フォローアップ時の発育評価についても、両群間で有意差は認められなかった。
(ケアネット)