妊婦に対するベンゾジアゼピン(BZD)の使用は頻繁に行われているにもかかわらず、母体や胎児への影響はよくわかっていない。カナダ・トロント大学のSophie Grigoriadis氏らは、出産前のBZD曝露が出産アウトカムに及ぼす影響について定量化を行った。Canadian Journal of Psychiatry誌オンライン版2020年3月9日号の報告。
2018年6月までの研究を、Medline、PsycINFO、CINAHL、Embase、Cochrane Libraryより検索した。研究の選択基準は、出産アウトカムについてBZD曝露群と非曝露群を比較した英語のコホート研究とした。2万3,909研究をスクリーニングし、56研究を評価、14研究をメタ解析に含めた。2人の独立したレビュアーがエビデンスの質を評価し、データを抽出した。ランダム効果メタ解析を用いて、推定値をプールした。サブ解析では、曝露のタイミングを含むいくつかの潜在的なモデレーターを調査した。
主な結果は以下のとおり。
・メタ解析により、十分なデータを有する9つのアウトカムが認められた。
・出産前のBZD曝露は、以下の6つのアウトカムのリスク増加と有意な関連が認められた。
●自然流産:プールされたオッズ比(OR)=1.86(95%信頼区間[CI]:1.43~2.42)
●早産:OR=1.96(95%CI:1.25~3.08)
●低出生体重:OR=2.24(95%CI:1.41~3.88)
●低アプガー指数:OR=2.19(95%CI:1.94~2.47)
●新生児集中治療室(NICU)への入院:OR=2.61(95%CI:1.64~4.14)
●中絶:OR=2.04(95%CI:1.23~3.40)
・一貫したモデレーターは認められず、ほとんどのアウトカムは、研究間で有意な不均一性が認められた。
・出生時体重(平均差[MD]:-151.35g、95%CI:-329.73~27.03)、在胎月齢(MD:-0.49週、95%CI:-1.18~0.19)、在胎不当過小(small for gestational age[SGA]、MD:1.42、95%CI:1.00~2.01)では、有意な関連性は認められなかったが、出版バイアスで調整後、在胎月齢とSGAでは有意な差が認められた。
著者らは「出産前のBZD曝露は、周産期におけるいくつかの有害なアウトカムのリスク増加と有意な関連が認められた。交絡を排除することはできないものの、NICU入院は臨床的に関連があり、抗うつ薬の文献での結果と一致している」としている。
(鷹野 敦夫)