臨床意思決定支援システムを利用した介入の大半は、推奨されるケアプロセスを受ける患者の割合を小~中程度改善することが、それらを報告した研究で見いだされた臨床エンドポイントの小さな変化によって確認された。また、ごく一部の試験では、推奨されたケアの提供が大幅に増加していたが、改善に関して説得力のある予測因子は確定できなかった。カナダ・トロント大学のJanice L. Kwan氏らが、臨床意思決定支援システムによって得られた改善効果と、多様な臨床設定と介入ターゲットにわたるプール効果の不均一性を調べるために行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。電子健康記録に組み込まれている臨床意思決定支援システムは、推奨されるケアプロセスを提供するように臨床医を促すが、こうした臨床意思決定支援システムのケア改善の可能性に対する期待にもかかわらず、2010年に行われたシステマティックレビューでは、ケアが改善した患者の割合は5%未満とわずかであった。BMJ誌2020年9月17日号掲載の報告。
臨床意思決定支援システムの特徴と試験特性による不均一性を分析
今回のシステマティクレビューとメタ解析は、2019年8月時点でMedlineを検索して行われた。
試験選択の適格基準は、臨床意思決定支援システムが推奨するケアを受けた患者のうち、確かな改善をみた例が何割あったかを報告した無作為化または準無作為化比較試験とした。試験内のクラスタリングを明らかにするために多層メタ解析モデルを活用し、メタ回帰分析を用いて、臨床意思決定支援システムの特徴と、効果量の不均一性を低下した試験特性を定量評価した。報告がある場合に臨床エンドポイントも評価した。
改善効果は小~中程度、不均一性の改善は見通せず
108論文(無作為化試験94件、準無作為化試験14件)において、122試験が報告されており、120万3,053例の患者と1万790例の医療提供者から分析可能なデータが得られた。
臨床意思決定支援システムの利用で、希望どおりのケアが受けられた患者の割合は5.8%(95%信頼区間[CI]:4.0~7.6%)増加していた。
プール効果は明らかな不均一性(I
2=76%)を示し、改善が報告されていた上位4分の1における改善患者の割合は、10~62%の範囲にわたっていた。
臨床エンドポイントが報告されていた30試験において、臨床意思決定支援システム利用による、ガイドラインに基づく目標値(血圧や脂質管理など)を達成した患者の割合の増加は、中央値0.3%(四分位範囲:-0.7~1.9)であった。
2つの研究特性(低い順守度、小児科)では、有意に大きな効果が認められたが、これら共変量を多変数メタ回帰に含めても不均一性は低下しなかった。
(ケアネット)