植込み型除細動器(ICD)や両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)の初回埋め込み手術の94%が、デバイスメーカーから謝礼金を受けている医師によって行われており、さらに、採用されているのはメーカーから執刀医への謝礼金額が最も高いものである可能性が明らかになったという。米国・Yale-New Haven HospitalのAmarnath R. Annapureddy氏らが、3年間で14万5,900例の患者を対象に行った横断調査の結果を報告した。米国では議会法によって2010年に、医薬品等のメーカーから医師への謝礼金については透明性を確保するため報告開示が義務付けられ(Physician Payments Sunshine Act)、ホームページ「The Facts About Open Payments Data」で詳細情報を入手することができるようになっている。これまでの研究で、医師への謝礼がジェネリック医薬品よりも先発医薬品を処方する可能性を高めることが報告されていたが、デバイスを巡っての研究は行われていなかった。JAMA誌2020年11月3日号掲載の報告。
医師への謝礼金最高額のデバイス使用率を期待使用率と比較
研究グループは、デバイスメーカーから医師へ支払われた謝礼金と、ICDまたはCRT-Dの初回埋め込み術を受けた患者のデバイス選択との関連を調べる横断研究を行った。対象は、2016年1月1日~2018年12月31日に、主要デバイスメーカー4社が製造したICDまたはCRT-Dの初回埋め込み術を受けた患者。米国心血管データレジストリ(National Cardiovascular Data Registry:NCDR)のICDレジストリと、Open Payments Programのデータをリンクし、調査した。
患者を、執刀医がメーカーから謝礼金を受けていたか否かで2コホートに層別化し、さらに謝礼金授受があった患者コホートを、執刀医が最高額の謝礼金を受け取っていたデバイスメーカー別(A~D社)に4群に分類した。各群で、実際に最高額の謝礼金が医師に支払われていたメーカー製デバイスが使われていた患者の割合(使用率)を算定し、そのうえで、被験者全体の該当デバイスの使用割合(期待使用率)との絶対差を求めた。
医師への謝礼金最高額のデバイス使用率、期待使用率との差は15~31%
3年間で、14万5,900例の患者がICDまたはCRT-Dの埋め込み術を受けていた。被験者の年齢中央値は65歳、女性は29.6%だった。被験者がICD/CRT-Dの初回埋め込み術を行った施設は1,763ヵ所で、執刀医は4,435人だった。執刀医のうち、デバイスメーカーから謝礼金を受けていたのは4,152人(94%)で、金額は2ドル~32万3,559ドル(中央値:1,211ドル、四分位範囲:390~3,702ドル)だった。
執刀医に最高額の謝礼金を支払ったメーカー製デバイスが使われていた各群の患者の割合(使用率)は、A群のA社製使用率は45.4%、B群のB社製使用率は54.7%、C群のC社製使用率は47.7%、D群のD社製使用率は38.5%だった。
いずれも同一群における他社製デバイスの使用率より高率で、患者は個々のメーカーからというよりも、執刀医に最高額の謝礼金が支払われているメーカーからデバイスを受ける可能性が大幅に高かった。各群の使用率と、期待使用率との絶対差は、A群は22.4%(95%信頼区間[CI]:21.9~22.9)、B群は14.5%(14.0~15.0)、C群は18.8%(18.2~19.4)、D群は30.6%(30.0~31.2)だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)