米国海軍入隊者1,848人について調べたところ、入隊時の定量PCR検査でSARS-CoV-2陰性だった入隊者のうち約2%が、入隊2週間後の検査で陽性に転じていた。また、入隊時の検査を拒否した入隊者のうち、同2週間後の検査で陽性だったのは2%未満であり、さらに、入隊2週間後の検査で陽性と判定された入隊者のうち、検査前から症状が認められたのは10%に満たず大半が無症状で、毎日の検温や体調モニタリングによるスクリーニングでは、SARS-CoV-2感染者は検出されなかったという。ゲノム解析では、6つの感染クラスターが確認された。米国・Naval Medical Research CenterのAndrew G. Letizia氏らが、若年成人におけるSARS-CoV-2感染制御のための有効な公衆衛生対策の研究が不十分であることから本検討を行い明らかにした。NEJM誌オンライン版2020年11月11日号掲載の報告。
系統樹解析でクラスターや疫学的特徴を検証
研究グループは、自宅で2週間の隔離生活を行った後、休校中の大学構内で2週間の監視下隔離生活(マスク装着、ソーシャルディスタンス、体温・体調を毎日モニタリング)を送った米国海軍入隊者1,848人に協力を仰ぎ試験を行った。
被験者は、学校に到着直後と2日、7日後と隔離生活終了時の14日後に、それぞれ鼻腔スワブによる定量PCR検査を受けSARS-CoV-2感染の有無を調べた。また、検査協力を拒否した入隊者については、隔離生活終了の14日後のみ定量PCR検査を受けた。
感染が確認された被験者のウイルスゲノムについて系統樹解析を行い、クラスターの特定と、感染の疫学的特徴を検証した。
ルームメイト、小隊内での感染を確認
大学到着2日後に定量PCR検査で陽性だったのは16人(0.9%)で、うち15人が無症状だった。同7日後または14日後には、さらに35人(1.9%)が陽性となった。14日後までに陽性だった51人のうち、定量PCR検査前1週間の間に症状が認められたのは5人(9.8%)のみだった。
同試験への自発的参加を拒否した入隊者で定量PCR検査結果が得られた1,554人のうち、14日後の検査で陽性だったのは26人(1.7%)だった。
毎日の体温・体調モニタリングの結果を踏まえて定量PCR検査を行った人からは、陽性者は確認されなかった。
32人の感染者から得た36のSARS-CoV-2ゲノムを解析したところ、18人について6つのクラスターを特定した。疫学的解析により、ルームメイトや同じ小隊内での感染など、複数の局地的感染の存在が確認された。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)