非糖尿病高血圧症患者の降圧治療第1選択薬について、英国の臨床ガイドラインでは、カルシウム拮抗薬(CCB)は55歳以上の患者と黒人(アフリカ系、アフリカ-カリブ系など)に、アンジオテンシン変換酵素阻害薬/アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ACEI/ARB)は55歳未満の非黒人に推奨されている。しかし、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のSarah-Jo Sinnott氏らによる同国プライマリケア患者を対象としたコホート試験の結果、非黒人患者におけるCCBの新規使用者とACEI/ARBの新規使用者における降圧の程度は、55歳未満群と55歳以上群で同等であることが示された。また、黒人患者については、CCB投与群の降圧効果がACEI/ARB投与群と比べて数値的には大きかったが、信頼区間(CI)値は両群間で重複していたことも示された。著者は、「今回の結果は、最近の英国の臨床ガイドラインに基づき選択した第1選択薬では、大幅な血圧低下には結び付かないことを示唆するものであった」とまとめている。BMJ誌2020年11月18日号掲載の報告。
12、26、52週後の収縮期血圧値の変化を比較
研究グループは、英国臨床ガイドラインに基づく推奨降圧薬が、最近の日常診療における降圧に結び付いているかを調べるため観察コホート試験を行った。英国プライマリケア診療所を通じて2007年1月1日~2017年12月31日に、新規に降圧薬(CCB、ACEI/ARB、サイアザイド系利尿薬)の処方を受けた患者を対象とした。
主要アウトカムは、ベースラインから12、26、52週後の収縮期血圧値の変化で、ACEI/ARB群vs.CCB群について、年齢(55歳未満、または以上)、人種(黒人またはそれ以外)で層別化し比較した。2次解析では、CCB群vs.サイアザイド系利尿薬群の新規使用者群の比較も行った。
ネガティブなアウトカム(帯状疱疹の発症など)を用いて、残余交絡因子を検出するとともに、一連の肯定的なアウトカム(期待される薬物効果など)を用いて、試験デザインが期待される関連性を特定できるかを判定した。
ACEI/ARB服用約8万8,000例、CCB約6万7,000例、利尿薬約2万2,000例を追跡
52週のフォローアップに包含された各薬剤の新規使用者は、ACEI/ARBが8万7,440例、CCBは6万7,274例、サイアザイド系利尿薬は2万2,040例だった(新規使用者1例当たりの血圧測定回数は4回[IQR:2~6])。
非糖尿病・非黒人・55歳未満の患者について、CCB群の収縮期血圧の低下幅はACEI/ARB群よりも大きく相対差で1.69mmHg(99%CI:-2.52~-0.86)だった。また、55歳以上の患者の同低下幅は0.40mmHg(-0.98~0.18)だった。
非糖尿病・非黒人について6つの年齢群別で見たサブグループ解析では、CCB群がACEI/ARB群より収縮期血圧値の減少幅が大きかったのは、75歳以上群のみだった。
非糖尿病患者において、12週後のCCB群とACEI/ARB群の収縮期血圧値の減少幅の差は、黒人群では-2.15mmHg(99%CI:-6.17~1.87)、非黒人では-0.98mmHg(-1.49~-0.47)と、いずれもCCB群でACEI/ARB群より減少幅が大きかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)