院外心停止患者において、亜硝酸ナトリウムの投与はプラセボと比較して、入院までの生存を改善しないことが、米国・ワシントン大学のFrancis Kim氏らによる第II相無作為化二重盲検プラセボ比較臨床試験の結果、明らかとなった。心停止の動物モデルでは、蘇生中の亜硝酸ナトリウムの治療的投与により生存率が改善することが認められているが、臨床試験における有効性の評価はこれまで行われていなかった。著者は今回の結果を受け、「院外心停止において蘇生中の亜硝酸ナトリウム投与は支持されない」とまとめている。JAMA誌2021年1月12日号掲載の報告。
約1,500例を亜硝酸ナトリウム45mg群、60mg群、プラセボ群に無作為化
研究グループは2018年2月8日~2019年8月19日の期間に、ワシントン州キング郡における心室細動または非心室細動による院外心停止の成人患者を登録し、亜硝酸ナトリウム45mg投与群、同60mg投与群、またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、救急医療隊員による積極的な蘇生中に可能な限り早期にボーラス投与した。
主要評価項目は、入院までの生存(片側検定で評価)。副次評価項目は、院外の変数(自己心拍再開率、再停止率、血圧を維持するためのノルエピネフリン投与)と、院内変数(退院までの生存、退院時の神経学的アウトカム、24時間・48時間・72時間までの累積生存率、集中治療室在室日数)などであった。
計1,502例(平均年齢64歳[SD 17]、女性34%)が無作為化を受け、99%が試験を完遂した。
入院時生存率は、亜硝酸ナトリウム投与群41~43%、プラセボ群44%
入院まで生存していた患者は、亜硝酸ナトリウム45mg群(500例)では205例(41%)、亜硝酸ナトリウム60mg群(498例)では212例(43%)、プラセボ群(499例)では218例(44%)であった。
入院時生存率のプラセボ群に対する平均群間差は、45mg群が-2.9%(片側95%信頼区間[CI]:-8.0~∞、p=0.82)、60mg群が-1.3%(-6.5~∞、p=0.66)で、いずれも有意差は認められなかった。
退院時生存など事前に設定された7つの副次評価項目も、有意差が確認されたものはなかった。退院時生存率は、45mg群13.2%、60mg群14.5%、プラセボ群14.9%で、退院時生存率のプラセボ群に対する平均群間差は、45mg群-1.7%(両側95%CI:-6.0~2.6、p=0.44)、60mg群は-0.4%(-4.9~4.0、p=0.85)であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)