HCVワクチン第I/II相試験、慢性感染への予防効果認めず/NEJM
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C型肝炎ウイルス(HCV)に対する2種の遺伝子組み換えワクチンを接種するワクチンレジメン戦略について、重篤な有害事象は起きずレジメンの安全性は確認され、HCV特異的T細胞反応とHCV RNAピーク値の低下は認められたことが示された。一方で、HCVの慢性感染に対する予防効果は認められなかった。米国・ニューメキシコ大学のKimberly Page氏らが、第I/II相無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。HCV感染症に対しては、現在、安全で有効な治療法があるが、注射器で薬物を使用するHCV感染者がHCVの治療を求めることはまれであるという研究が示されており、HCV感染症を撲滅する取り組みにおいては、HCVの慢性感染を予防する安全で有効なワクチンが重要な要素になる。試験の結果を踏まえて著者は、「世界的な制御を成功させるには、HCV感染症予防のための他の戦略、スクリーニングおよび治療に加えて、予防的なワクチンが必要になるだろう」と述べている。NEJM誌2021年2月11日号掲載の報告。
0日目、56日目に接種するワクチンレジメン
今回の検討では、HCVの感染リスクが高いが感染不明者へのワクチン接種の安全性を評価すること、およびワクチンレジメンがプラセボよりもHCV慢性感染に有効かどうかを確認することを主な目的とした。副次目的として、ワクチンの免疫原性を評価した。研究グループは、2012~18年にジョンズ・ホプキンズ大学、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、ニューメキシコ大学で、無作為化前90日以内に薬物注射歴があるHCV感染不明の健康成人(18~45歳)548例を対象に試験を実施。遺伝子組み換えチンパンジーアデノウイルス3型ベクター(ChAd3)のプライミングワクチン接種と、遺伝子組み換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)のブースター接種のワクチンレジメンについて検討した。両ワクチンは、HCV非構造蛋白をコード化したものだった。
被験者を無作為に2群に分け、0日目と56日目に一方には前述のワクチンを、もう一方にはプラセボを接種した。
安全性の主要エンドポイントは、ワクチン関連の重篤な有害事象、重度の局所または全身性の有害事象、臨床検査値で認められる有害事象だった。有効性の主要エンドポイントは、HCV慢性感染で、6ヵ月持続するウイルス血症と定義した。
per-protocol集団で両群のHCV慢性感染はいずれも14例
548例(78%が男性、61%が白人)は、ワクチン接種群、対照群それぞれ274例に無作為に割り付けられた。HCV慢性感染の発生率について、両群に有意差は認められなかった。per-protocol集団(ワクチン群261例、プラセボ群259例)でHCV慢性感染が認められたのは、両群とも14例だった(ワクチン群vs.プラセボ群のハザード比[HR]:1.53[95%信頼区間[CI]:0.66~3.55]、ワクチン有効性:-53%[95%CI:-255~34])。
修正intention-to-treat集団(ワクチン群256例、プラセボ群257例)では、HCV慢性感染が認められたのは、ワクチン群19例、プラセボ群17例だった(HR:1.66[95%CI:0.79~3.50]、ワクチン有効性:-66%[95%CI:-250~21])。
一方、感染後HCV RNAのピーク値幾何平均には、ワクチン群とプラセボ群で差が認められた(それぞれ、152.51×103 IU/mL、1,804.93×103 IU/mL)。また、HCVに対するT細胞反応は、ワクチン群では78%で検出された。
重篤な有害事象の発現頻度は、両群で同程度だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)
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