COVID-19パンデミックの当初11ヵ月間における英国での検査・追跡・隔離システムの順守について調査した結果、経時的に多少の改善は認めるものの順守率は低調だったという。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのLouise E. Smith氏らが、オンライン調査の結果を報告した。検査・追跡・隔離システムは全英のCOVID-19回復戦略の柱の1つであり、このシステムの成功は、症状が認められた場合は隔離し、発症した場合は検査し、感染が確認されたら濃厚接触者の情報提供を得ることに依存している。著者は、「実用的なサポートと金銭的補償がシステムの順守を改善する可能性がある。男性、若年層、医療福祉関連等の労働者を対象としたメッセージや政策も必要かもしれない」とまとめている。BMJ誌2021年3月31日号掲載の報告。
オンライン調査のデータを解析
研究グループは、英国保健省に代わりBMG Researchが実施したオンライン調査を用い、「COVID-19 Rapid Survey of Adherence to Interventions and Responses(CORSAIR)study」の一環として解析した。対象は、2020年3月2日~2021年1月27日(調査開始第6週~第42週の計37週)の調査データで、16歳以上の英国在住者5万3,880例から得られた7万4,697件の回答(37週、各週約2,000件)。
調査項目は、COVID-19の主な症状の有無(咳嗽、高熱/発熱、嗅覚/味覚消失)、症状を有する場合は自己隔離しているか、症状が現れた場合は自己隔離する意思があるか、症状を有する場合は検査を要請したか、症状が現れた場合は検査を要請する意思があるか、濃厚接触者について詳細を共有する意思があるか、であった(いずれも自己報告)。
症状を有し自己隔離した人は42.5%、検査を自ら受けた人は18%
参加者の51.5%(95%信頼区間[CI]:51.0~51.9、2万6,030/5万570例)のみに、COVID-19の主な症状が認められた。最新の調査週(2021年1月25日~27日)に収集されたデータでは、50.8%であった(95%CI:48.6~53.0、1,019/2,007例)。
すべての調査週にわたる期間補正後完全自己隔離順守率は42.5%(95%CI:39.7~45.2%、515/1,213例)であり、最新の調査週では同51.8%(40.8~62.8、43/83例)であった。
COVID-19検査の要請は、全週で18.0%(95%CI:16.6~19.3%、552/3,068例)であり、最新の調査週では22.2%まで上昇した(14.6~29.9%、26/117例)。
濃厚接触者の詳細を共有する意思があると報告した人の割合は、全週で79.1%(95%CI:78.8~79.5%、3万6,145/4万5,680例)、最新週で81.9%(80.1~83.6、1,547/1,890例)であった。
非順守は、男性、若年、扶養の子供がいる世帯、社会経済的に低階級、パンデミック中の経済困難の大きさ、主要セクター(医療福祉関連等)での労働と関連していた。
(医学ライター 吉尾 幸恵)