開発中のRNA干渉(RNAi)治療薬lumasiranは、原発性高シュウ酸尿症I型(PH1)の進行性腎不全の原因である尿中へのシュウ酸排泄量を減少させ、投与を受けた患者の大多数で、6ヵ月の治療後、同排泄量は正常またはほぼ正常値となっていた。オランダ・アムステルダム大学のSander F. Garrelfs氏らILLUMINATE-A研究グループが、第III相の二重盲検無作為化試験の結果を報告した。PH1は、まれな遺伝性疾患であり、シュウ酸が肝臓で過剰に産生されることで腎結石、腎石灰化症、腎不全および全身性のシュウ酸症を引き起こす。lumasiranは、グリコール酸オキシダーゼを標的とすることで肝臓でのシュウ酸産生を抑制する新たなRNAi治療薬である。NEJM誌2021年4月1日号掲載の報告。
投与6ヵ月間の24時間尿中シュウ酸排泄量の変化を評価
試験は国際無作為化二重盲検プラセボ対照にて、被験者を2対1の割合でlumasiran(3mg/kg体重)群またはプラセボ群に割り付け、6ヵ月間の投与を行い、その後54ヵ月まで期間を延長し、全被験者にlumasiranを投与した。
投与は当初、月1回を3回、その後は3ヵ月に1回の維持投与が行われた(6ヵ月の治療期間中の投与は、ベースライン、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月および6ヵ月時)。
主要エンドポイントは、ベースラインから6ヵ月までの24時間尿中シュウ酸排泄量のパーセント変化値(3ヵ月から6ヵ月にかけての平均パーセント変化値)であった。副次エンドポイントは、ベースラインから6ヵ月までの血漿中シュウ酸値のパーセント変化値(3ヵ月から6ヵ月にかけての平均パーセント変化値)、6ヵ月時点の24時間尿中シュウ酸排泄量が正常範囲上限値の1.5倍以下であった患者の割合などであった。
投与1ヵ月時点で効果、84%が6ヵ月時に正常・ほぼ正常値
2019年1月~5月に、8ヵ国16施設で合計患者39例が無作為化を受けた(lumasiran群26例、プラセボ群13例)。全体の試験登録時の年齢中央値は14歳(範囲:6~60)、ベースラインでの平均24時間尿中シュウ酸排泄量は1.82mmol/24時間/1.73m
2であった。
主要エンドポイントの最小二乗平均群間差は-53.5ポイントで(p<0.001)、lumasiran群のパーセント変化値は-65.4%であり、減少効果はほぼ1ヵ月時点でみられた。
階層的に検証したすべての副次エンドポイントについて、有意差が認められた。血漿中シュウ酸値のパーセント変化値の群間差は、-39.5ポイントであった(p<0.001)。
6ヵ月時点の24時間尿中シュウ酸排泄量が正常範囲上限値の1.5倍以下であった患者は、lumasiran群では84%に達し、一方のプラセボ群は0%であった(p<0.001)。
なお、軽度の一過性の注射部位反応が、lumasiran投与を受けた患者の38%で報告された。
(ケアネット)