入院患者の輸液セット(中心静脈アクセスデバイス[CVAD]、末梢動脈カテーテル[PAC])の7日間隔での交換は、4日間隔の交換と比較して、カテーテル関連血流感染症(CRBSI)の発生に差はなく、7日に延長した結果として費用や看護の作業時間が削減されることが、オーストラリア・クイーンズランド大学のClaire M. Rickard氏らが実施した「RSVP試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年4月17日号に掲載された。
オーストラリア10施設の無作為化同等性・非劣性試験
本研究は、オーストラリアの10施設が参加した評価者盲検無作為化対照比較試験であり、CVADでは同等性の、PACでは非劣性の評価が行われた(オーストラリア国立保健医療研究評議会の助成による)。
対象は、年齢制限のない入院患者(内科、外科、がん、集中治療室[ICU、ただし新生児ICUは除く])で、少なくとも24時間、CVAD(末梢挿入型中心静脈カテーテル[PICC]、トンネル型カフまたは非トンネル型CVAD、完全埋込み型ポート)またはPACが留置され、7日間以上の留置が見込まれる者であった。
被験者は、輸液セットを7日ごとまたは4日ごとに交換する群に無作為に割り付けられた。輸液セットには、晶質液、脂質を除く静脈栄養、薬剤注入などが含まれた。介入の性質上、患者と医療従事者には割り付け情報はマスクされなかったが、主要評価項目(CRBSIの発生)の判定はマスクされた感染症専門医によって行われた。CVADの同等性とPACの非劣性のマージンはいずれも2%とされた。
2011年5月~2016年12月の期間に2,944例が登録され、7日群に1,484例(CVAD:1,127例、PAC:357例)、4日群に1,460例(1,097例、363例)が割り付けられた。7日群は、成人が87.3%(年齢中央値59.0歳)、小児が12.7%(3.2歳)、女性が36.9%で、4日群は成人が86.2%(57.0歳)、小児が13.8%(2.3歳)、女性は37.3%であった。
主要評価項目の解析には、2,941例(99.9%、修正intention to treat集団、成人2,552例、小児389例)が含まれた。
CVADで費用が483豪ドル、看護時間が174分削減
CVADでは、CRBSIの発生率は7日群が1.78%(20/1,124例)、4日群は1.46%(16/1,097例)であり、両群の同等性が確認された(絶対リスク差[ARD]:0.32%、95%信頼区間[CI]:-0.73~1.37)。また、1,000日当たりのCRBSI発生率に差はなく(7日群1.36 vs.4日群1.08、ハザード比[HR]:1.33、95%CI:0.69~2.57、p=0.40)、CRBSI発生までの期間も両群で同程度だった(p=0.45)。
一方、PACでは、CRBSIの発生率は7日群が0.28%(1/357例)、4日群は0%(0/363例)であり、7日群の4日群に対する非劣性が確定された(ARD:0.28%、-0.27~0.83)。
CRBSIが発生した37例(CVAD:36例、PAC:1例)の原因微生物は16種類で、多くがグラム陽性菌(62.2%)であった。37例中17例では一般的な常在菌が関与しており、この17例中14例(82.3%)では血液中から2回以上、菌が分離された。
7日群は4日群に比べ、平均費用がCVADで483豪ドル、PACでは43豪ドル削減された。費用差の事後分布では、7日群で費用が削減される確率は、CVADで89%、PACでは66%だった。また、7日群は4日群に比べ、看護時間中央値がCVADで174分(最長1,610分)、PACでは7分(最長179分)短縮された。
治療関連の有害事象は発現しなかった。重篤な有害事象の頻度にも、CVADとPACの双方で輸液期間の違いによる差はなく、CRBSIによる死亡例はなかった。
著者は、「現代的で効率的な保健医療の領域では、効果がないことを示すエビデンスがある場合は、投資の中止を含め、従来の診療法や日常的な手技に疑問を持つことが必要である」と指摘し、「輸液の看護手技の頻度を削減することで、手指衛生や無菌操作、患者・家族へのCRBSI予防教育などの他の基本的な感染予防に、より多くの時間を割けるようになることが期待される」としている。
(医学ライター 菅野 守)