多枝病変を有するST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、梗塞関連病変へのPCI成功後の非責任病変の完全血行再建は、冠血流予備量比(FFR)ガイド下と血管造影ガイド下で有益性に差は認められなかった。フランス・パリ大学のEtienne Puymirat氏らが、Flow Evaluation to Guide Revascularization in Multivessel ST-Elevation Myocardial Infarction(FLOWER-MI)試験の結果を報告した。ただし、イベント発生率が予想より低く統計学的検出力が計画より低下したため、著者は、「FFRガイド下治療の有意な効果は認められなかったが、主要評価項目のハザード比の95%信頼区間(CI)が0.78~2.23と非常に広く、これはFFRガイド下治療により相対的に22%リスクが低下または123%リスクが上昇することを表しており、今回の結果を結論付ける解釈はできない」との見解を示している。非責任病変へのPCI追加による完全血行再建が、責任病変単独治療より優れているが、FFRガイド下治療が血管造影ガイド治療より優れているかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2021年5月16日号掲載の報告。
多枝病変のSTEMI患者1,171例で、1年後の主要心血管イベントを比較
FLOWER-MI試験は、2016年12月18日~2018年12月6日に、フランス国内41施設で実施された医師主導の評価者盲検無作為化非盲検試験である。梗塞関連病変のPCIが成功した18歳以上の多枝病変STEMI患者で、50%以上狭窄の非責任病変が1つ以上存在し、PCIの適応と判断された患者1,171例を、FFRガイド群(590例)または血管造影ガイド群(581例)に1対1の割合で無作為に割り付け、入院中に完全血行再建術を行った。
主要評価項目は、1年時点での全死因死亡、非致死的MI、緊急血行再建に至る予定外入院の複合であった。
FFRガイド下完全血行再建術、血管造影ガイド下と比べて有意差なし
各群4例が同意撤回等により除外され、intention-to-treat解析集団はFFRガイド群586例、血管造影ガイド群577例であった。PCIは、それぞれ388例(66.2%)、560例(97.1%)に実施され、非責任病変のステント留置数/例(平均±SD)は、FFRガイド群1.01±0.99、血管造影ガイド群1.50±0.86であった。
主要評価項目イベントは、FFRガイド群で5.5%(32/586例)、血管造影ガイド群で4.2%(24/577例)に発生し、ハザード比(HR)は1.32(95%CI:0.78~2.23、p=0.31)であった。
また、全死因死亡は1.5%(9例)vs.1.7%(10例)(HR:0.89、95%CI:0.36~2.20)、非致死的MIは3.1%(18例)vs.1.7%(10例)(1.77、0.82~3.84)、緊急血行再建に至る予定外入院は2.6%(15例)vs.1.9%(11例)(1.34、0.62~2.92)であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)