食前インスリン療法は行わず、基礎インスリン療法でコントロール不良な2型糖尿病の成人患者の血糖測定法として、持続血糖モニタリング(CGM)は通常の血糖測定器(BGM)によるモニタリングと比較して、8ヵ月後の糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が統計学的に有意に低下することが、米国・International Diabetes Center, Park Nicollet Internal MedicineのThomas Martens氏らが実施した「MOBILE試験」で示された。JAMA誌2021年6月8日号掲載の報告。
米国のプライマリケア施設の無作為化臨床試験
本研究は、プライマリケア施設で基礎インスリン療法を受けている2型糖尿病成人患者におけるCGMの有効性の評価を目的とする無作為化臨床試験であり、米国の15施設が参加し、2018年7月~2019年10月の期間に患者登録が行われた(米国・Dexcomの助成による)。
対象は、年齢30歳以上、2型糖尿病でプライマリケア医の治療を受け、持効型または中間型基礎インスリンを1日1~2回投与され、食前インスリン療法は行っていない患者であり、非インスリン血糖降下薬の投与の有無は問われなかった。
被験者は、CGM(Dexcom G6 CGMシステム)またはBGMでのモニタリングを行う群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。CGM群は、間質液中のグルコース濃度を5分ごとに測定し、必要に応じてBGMでのモニタリングが行われた。BGM群は、空腹時および食後に、1日1~3回、血糖値が測定された。
主要アウトカムは、8ヵ月後の平均HbA1c値とした。
目標範囲内時間の割合が高く、血糖値>250mg/dLの時間の割合は低い
175例(平均[SD]年齢57[9]歳、女性88例[50%]、平均HbA1c値9.1%[0.9])が登録され、CGM群に116例、BGM群に59例が割り付けられた。このうち165例(94%)が試験を完了した。
平均HbA1c値は、CGM群がベースラインの9.1%から8ヵ月後には8.0%へ、BGM群は9.0%から8.4%へと低下し、CGM群で有意な改善効果が認められた(補正後群間差:-0.4%、95%信頼区間[CI]:-0.8~-0.1、p=0.02)。
CGM群はBGM群に比べ、血糖値が目標範囲内(70~180mg/dL)の時間の割合(59% vs.43%、補正後群間差:15%、95%CI:8~23、p<0.001)、血糖値>250mg/dLの時間の割合(11% vs.27%、-16%、-21~-11、p<0.001)、ベースライン値で補正された8ヵ月後の血糖値(179mg/dL vs.206mg/dL、-26mg/dL、-41~-12、p<0.001)が、いずれも有意に良好であった(割合と血糖値は平均値)。
重篤な低血糖は、CGM群で1例(1%)、BGM群で1例(2%)に発現した。糖尿病性ケトアシドーシスは、CGM群で1例(1%)にみられた。
著者は、「本試験はプライマリケア施設で患者の募集が行われ、内分泌専門医は関与していないが、糖尿病専門医がプライマリケア医に助言を行っており、これは現在の標準的な診療形態ではないため、得られた知見の一般化可能性には限界がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)