中等量(3g)のグルテンを毎日摂取しているセリアック病患者において、経口トランスグルタミナーゼ2阻害薬ZED1227はプラセボと比較して、グルテンによる十二指腸粘膜の傷害を抑制し、有害事象の頻度や重症度は同程度であることが、ドイツ・ヨハネス・グーテンベルク大学マインツのDetlef Schuppan氏らが実施したCEC-3試験で示された。研究の成果はNEJM誌2021年7月1日号で報告された。
3用量を評価するプラセボ対照無作為化第II相試験
研究グループは、セリアック病の治療における選択的トランスグルタミナーゼ2阻害薬ZED1227の概念実証試験として、二重盲検プラセボ対照無作為化第II相用量探索試験を行った(ドイツ・Dr. Falk Pharmaの助成による)。本試験は、2018年5月~2020年2月の期間に、欧州7ヵ国の20施設で行われた。
対象は、年齢18~65歳、スクリーニングの12ヵ月以上前に生検でセリアック病と確定診断され、HLA-DQ2またはHLA-DQ8の遺伝子型が陽性の患者であった。
被験者は、ZED1227 10mg、同50mg、同100mgまたはプラセボを経口投与する群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。これらの参加者は、毎朝、少なくとも6時間の絶食後に服薬し、30分後の朝食前にグルテン3gを含むビスケットを1つ食べ、6週の試験期間中、このビスケットを除き、厳格なグルテン除去食を継続するよう求められた。
主要エンドポイントは、グルテンによって誘導された粘膜傷害の軽減とし、十二指腸生検で得られた検体を用いて、絨毛の高さと陰窩の深さの比で評価された。
163例が登録され、ZED1227 10mg群に41例(平均年齢40.2歳、女性90%)、同50mg群に41例(42.8歳、71%)、同100mg群に41例(41.0歳、62%)、プラセボ群に40例(42.5歳、74%)が割り付けられ、それぞれ35例、39例、38例、30例において、十二指腸生検で主要エンドポイントの評価のための適切な検体が得られた。担当医の評価と患者の日誌に基づくアドヒアランスは、4群で服薬およびグルテン摂取とも96~100%と高かった。
3用量すべてで主要エンドポイント達成
ZED1227の3用量のいずれにおいても、グルテンによる十二指腸粘膜傷害が改善された。すなわち、絨毛陰窩比(平均値)のベースラインから6週までの変化量の、プラセボ群との推定差は、10mg群が0.44(95%信頼区間[CI]:0.15~0.73、p=0.001)、50mg群が0.49(0.20~0.77、p<0.001)、100群は0.48(0.20~0.77、p<0.001)であった。
上皮内リンパ球密度(修正Marsh-Oberhuber分類)の6週までの変化量の、プラセボ群との推定差は、上皮細胞100個当たり10mg群が-2.7個(95%CI:-7.6~2.2)、50mg群が-4.2個(-8.9~0.6)、100mg群は-9.6個(-14.4~-4.8)であり、ZED1227の用量依存的に増加の程度が低くなった。
患者報告アウトカムとしてのセリアック病症状指標スコア(プラセボ群との推定差[95%CI]、10mg群:-3.0点[-5.9~-0.2]、50mg群:-2.0点[−4.9~0.9]、100mg群:-3.8点[-6.7~-1.0])、および健康関連QOLを評価するセリアック病質問票スコア(同10mg群:5.3点[-0.4~10.9]、50mg群:2.9点[-2.7~8.6]、100mg群:5.8点[0.1~11.5])は、いずれも100mg群で良好な傾向が認められた。
頻度の高い有害事象は、頭痛、悪心、下痢、嘔吐、腹痛で、発生率は4群で同程度であった。皮疹が100mg群の8%(3/40例)で発現したが、他の3群ではみられなかった。
著者は、「患者報告アウトカムはZED1227の全用量で改善されたが、これは、症状を評価するにはどの用量も症例数がやや少なく、尺度にはセリアック病と共通するが関連のない症状がいくつか含まれたことを反映している可能性があり、今後、より大規模な試験で確認する必要がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)