新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者を対象とした臨床試験の前向きメタ解析の結果、IL-6受容体拮抗薬は通常の治療やプラセボと比較し、28日全死因死亡率の低下と関連していることが認められた。WHO Rapid Evidence Appraisal for COVID-19 Therapies(REACT)Working Groupメンバーで、英国・St Thomas' HospitalのManu Shankar-Hari氏らが報告した。COVID-19入院患者へのIL-6受容体拮抗薬の有効性を評価した臨床試験では、有益、有効性なし、有害とさまざまな報告がされていた。JAMA誌オンライン版2021年7月6日号掲載の報告。
27試験の1万930例について、前向きメタ解析を実施
研究グループは、2020年10月~2021年1月に、電子データベースを検索して試験を特定し(試験状況や言語による制限なし)、さらに専門家への連絡を介して追加の試験を特定した。適格としたのは、COVID-19入院患者を対象に、IL-6受容体拮抗薬投与群と、IL-6受容体拮抗薬あるいはコルチコステロイドを除く他の免疫調整薬のいずれも投与しない群に無作為に割り付けた試験とした。
可能性のある適格試験72件のうち、27件(37.5%)が試験の選択基準を満たした。
主要評価項目は、無作為化後28日全死因死亡率、副次評価項目は侵襲的人工換気への移行または死亡、28日までの2次感染リスクなど9項目である。
Cochrane Risk of Bias Assessment Toolを使用してバイアスリスクを評価し、試験結果の不一致はI
2統計量を用いて評価した。主要解析は、28日全死因死亡率のオッズ比(OR)の逆分散加重固定効果メタ解析とした。
27試験の計1万930例(年齢中央値61歳[中央値の範囲52~68]、女性3,560例[33%])が解析に組み込まれた。
IL-6受容体拮抗薬群で、通常治療またはプラセボ群と比較し28日全死因死亡率が低下
無作為化後28日間に、IL-6受容体拮抗薬群6,449例中1,407例、通常治療またはプラセボ群4,481例中1,158例が死亡した(要約OR:0.86、95%信頼区間[CI]:0.79~0.95、固定効果メタ解析のp=0.003)。
これはIL-6受容体拮抗薬群の絶対死亡リスクは22%、通常治療またはプラセボ群の推定死亡リスクは25%に相当し、対応する要約ORは、トシリズマブが0.83(95%CI:0.74~0.92、p<0.001)、サリルマブは1.08(0.86~1.36、p=0.52)であった。
コルチコステロイドの投与を受けた患者では、通常治療またはプラセボ群と比較した死亡の要約ORは、トシリズマブ0.77(95%CI:0.68~0.87)、サリルマブ0.92(0.61~1.38)であった。
侵襲的人工換気への移行または死亡のORは、通常治療またはプラセボ群と比較して、IL-6受容体拮抗薬群全体で0.77(95%CI:0.70~0.85)であり、トシリズマブで0.74(0.66~0.82)、サリルマブで1.00(0.74~1.34)であった。
28日目までの2次感染の発生率は、IL-6受容体拮抗薬群21.9%、通常治療またはプラセボ群17.6%であった(OR:0.99、95%CI:0.85~1.16)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)