MRIで前立腺がんが示唆された男性に対するMRI標的生検は、標準生検に対して、臨床的に意義のある前立腺がんの検出に関して非劣性であることが、住民ベースの無作為化非劣性試験で明らかとなった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のMartin Eklund氏らが結果を報告した。前立腺がんスクリーニングでは、過剰診断率の高さが大きな障壁となっている。MRI標的生検はこの課題を解決できる可能性が示唆されていたが、前立腺がんスクリーニングにおけるMRI標的生検の意義は不明であった。NEJM誌オンライン版2021年7月9日号掲載の報告。
前立腺がんの診断について、MRI標的生検と標準生検を比較
研究グループは、スウェーデン統計局が無作為に抽出して郵送にて試験への参加を依頼したストックホルム在住の50~74歳の男性で、参加の同意を示したPSA値3ng/mL以上の参加者を、標準生検群と、MRIを実施し前立腺がんが示唆された場合には標的生検と標準生検を実施する試験生検群に、2対3の割合で無作為に割り付けた。
主要評価項目は、intention-to-treat(ITT)集団におけるグリソンスコア7以上の臨床的に意義のあるがんと診断された男性の割合で、主要副次評価項目はグリソンスコア6の臨床的に意義のないがんの検出とした。
臨床的に意義のあるがんの診断は非劣性
1万2,750例の男性が参加登録し、このうちPSA値3ng/mL以上であった1,532例が無作為に標準生検群(603例)、試験生検群(929例)に割り付けられた。
ITT解析において、臨床的に意義のあるがんは試験生検群192例(21%)、標準生検群106例(18%)に認められた(群間差:3ポイント、95%信頼区間[CI]:-1~7、非劣性のp<0.001)。一方で、臨床的に意義のないがんの検出は、試験生検群が標準生検群と比較して低かった(4% vs.12%、群間差:-8ポイント、95%CI:-11~-5)。
なお、著者は研究の限界として、一般化の可能性に限界があること、実施されたスクリーニングが1回のみであることなどを挙げ、前立腺がんの死亡率に関してMRI標的生検と標準生検で同等かどうかについては結論付けられないとしている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)