新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は急性心筋梗塞および虚血性脳卒中のリスク因子であることが、スウェーデンにおけるCOVID-19の全症例を分析した自己対照ケースシリーズ(SCCS)およびマッチドコホート研究で示唆された。スウェーデン・ウメオ大学のIoannis Katsoularis氏らが報告した。COVID-19は多臓器を標的とした複雑な疾患であり、これまでの研究で、COVID-19が急性心血管系合併症の有力なリスク因子であることが浮き彫りになっていた。Lancet誌オンライン版2021年7月29日号掲載の報告。
スウェーデンのCOVID-19全患者約8万7千例を解析
研究グループは、2020年2月1日~9月14日の期間にスウェーデンでCOVID-19を発症したすべての患者の個人識別番号を特定し、入院、外来、がんおよび死因に関する登録とクロスリンクした。対照群は、年齢、性別、スウェーデンの居住地域でマッチングさせた。SCCSではCOVID-19全患者、マッチドコホート研究ではCOVID-19全患者とマッチングした対照者の入院原因は、急性心筋梗塞または虚血性脳卒中の国際疾病分類コードによって特定された。
SCCS研究では、COVID-19発症後の初回急性心筋梗塞または虚血性脳卒中の発生率比(IRR)を算出し対照期間と比較。マッチドコホート研究では、COVID-19発症後2週間以内における初回急性心筋梗塞または虚血性脳卒中の発症リスク増加を、マッチングし対照群と比較した。
解析対象は、SCCS研究でCOVID-19全患者8万6,742例、マッチドコホート研究でマッチングされた対照者34万8,481例であった。
急性心筋梗塞および虚血性脳卒中のリスクはCOVID-19発症後1週以内で約3倍
SCCS研究における初回急性心筋梗塞のIRRは、COVID-19発症日をリスク期間から除外した解析(解析1)では、COVID-19発症後1週間以内(1~7日)で2.89(95%信頼区間[CI]:1.51~5.55)、2週目(8~14日)で2.53(1.29~4.94)、3~4週目(15~28日)で1.60(0.84~3.04)、COVID-19発症日をリスク期間に含めた解析(解析2)では、それぞれ8.44(5.45~13.08)、2.56(1.31~5.01)、1.62(0.85~3.09)であった。
また、初回虚血性脳卒中のIRRは、解析1では、それぞれ2.97(95%CI:1.71~5.15)、2.80(1.60~4.88)、2.10(1.33~3.32)、解析2では6.18(4.06~9.42)、2.85(1.64~4.97)、2.14(1.36~3.38)であった。
マッチドコホート研究では、解析1の場合、COVID-19発症後2週以内の初回急性心筋梗塞のオッズ比(OR)は3.41(95%CI:1.58~7.36)、虚血性脳卒中は3.63(1.69~7.80)、解析2の場合、それぞれ6.61(3.56~12.20)、6.74(3.71~12.20)であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)