片頭痛の予防治療において、小分子カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体作動薬atogepantの1日1回経口投与はプラセボと比較して、12週間の片頭痛日数および頭痛日数を減少させ、片頭痛急性期治療薬の使用日数やQOLも良好であり、有害事象の頻度は同程度であることが、米国・MedStar Georgetown University HospitalのJessica Ailani氏らが実施した「ADVANCE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年8月19日号に掲載された。
3用量を評価する米国の無作為化プラセボ対照比較試験
本研究は、atogepantの3つの用量の1日1回経口投与の有効性と安全性の評価を目的とする第III相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2018年12月~2020年6月の期間に、米国の128施設で患者登録が行われた(Allerganの助成を受けた)。
対象は、年齢18~80歳、初回受診前の3ヵ月間に片頭痛が毎月4~14日発現し、予防治療の対象として適切と見なされた患者であった。また、参加者は、前兆の有無を問わず片頭痛罹患期間が1年以上で、発症年齢が50歳未満とされた。被験者は、atogepant 10mg、同30mg、同60mgを12週間、1日1回経口投与する群またはプラセボ群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。
910例(atogepant 10mg群222例、同30mg群230例、同60mg群235例、プラセボ群223例)が登録され、このうち安全性の評価に902例、有効性の評価には873例(修正intention-to-treat[mITT]集団)が含まれた。805例(88.5%)が試験を完了した。
安全性評価集団の平均年齢は41.6歳(範囲 18~73歳)、多くが女性(88.8%)であり、平均BMIは30.6、過去3ヵ月間における片頭痛発現の月平均日数は7.4日だった。スクリーニング時に、99.3%が片頭痛急性期治療薬の使用を、70.3%が過去に片頭痛の予防治療を行ったことを報告した。
片頭痛日数/月がプラセボより1.2~1.7日減少
mITT集団の各群におけるベースライン時の片頭痛発現の月平均日数は7.5~7.9日であった。主要エンドポイントである「ベースラインから12週間までの1ヵ月当たりの平均片頭痛日数の変化」は、atogepant 10mg群が-3.7日、30mg群が-3.9日、60mg群が-4.2日であり、プラセボ群は-2.5日であった。ベースラインからの変化のプラセボ群との平均差は、atogepant 10mg群が-1.2日(95%信頼区間[CI]:-1.8~-0.6)、30mg群が-1.4日(-1.9~-0.8)、60mg群は-1.7日(-2.3~-1.2)だった(プラセボ群との比較でいずれもp<0.001)。
副次エンドポイントに関しては、「1ヵ月当たりの頭痛日数」「1ヵ月当たりの片頭痛急性期治療薬の使用日数」「1ヵ月当たりの片頭痛日数の3ヵ月間の平均値がベースラインから50%以上低下した患者の割合」「片頭痛特異的QOL質問票(MSQ ver 2.1)の役割機能制限ドメイン」の結果が、いずれもatogepantの3つの用量群でプラセボ群に比べ有意に良好であった(すべてp<0.001)。また、「片頭痛活動障害・ダイアリー指標(AIM-D)の日常活動実施能力ドメインのスコア」と「AIM-Dの身体障害ドメインのスコア」は、10mg群ではプラセボ群と差がなかったものの、30mg群と60mg群は有意に優れた。
有害事象は、atogepant群では52.2~53.7%に発現し、プラセボ群では56.8%にみられた。atogepant群で最も頻度の高い有害事象は、便秘(3用量群で6.9~7.7%)、悪心(4.4~6.1%)、上気道感染症(3.9~5.7%)であった。atogepant群で認められた重篤な有害事象は、10mg群の気管支喘息発作1例および視神経炎1例であった。
著者は、「片頭痛予防におけるatogepantの効果と安全性を明らかにするには、より長期で大規模な臨床試験が求められる」としている。
(医学ライター 菅野 守)