片頭痛の成人患者の食事療法において、高n-3系脂肪酸食と高n-3系+低n-6系脂肪酸食は、これらの脂肪酸が米国の平均量の食事と比較して、頭痛の病因に関与する生理活性メディエータに変化をもたらし、頭痛の頻度と重症度を軽減するが、QOLには影響を及ぼさないことが、米国・国立老化研究所(NIA)のChristopher E. Ramsden氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2021年7月1日号で報告された。
3群で17-HDHAとHIT-6を評価する無作為化対照比較試験
研究グループは、片頭痛の成人患者において、高n-3系脂肪酸±低n-6系脂肪酸食による食事介入は、頭痛の病因に関与する循環血中の脂質メディエータを変化させ、痛みを軽減するかを検証する目的で、修正二重盲検無作為化対照比較試験を実施した(米国国立補完統合衛生センター[NCCIH]などの助成による)。本試験は、2014年7月~2018年5月の期間に、米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校で行われた。
対象は、毎月5~20日間、片頭痛が発現し、前兆の有無を問わず国際頭痛分類(2004年版)の片頭痛の基準を満たす成人患者であった。
被験者は、n-3系脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)+ドコサヘキサエン酸(DHA)と、n-6系脂肪酸であるリノール酸の含有量に基づく2種の食事介入群、および対照群の3群に無作為に割り付けられた。無作為化の際に、栄養士は割り付けられた食事について参加者に説明する必要があるため、割り付け情報をマスクされなかった。
介入群の1つは、EPA+DHAの量を1.5g/日に増量し、リノール酸をエネルギーの7.2%(米国の平均的な量)に保持した食事(H3食)で、もう1つは、EPA+DHAの量を1.5g/日に増量し、リノール酸をエネルギーの1.8%以下に減量した食事(H3-L6食)であった。対照食は、EPA+DHAの量を150mg/日未満(米国の平均的な量)、リノール酸をエネルギーの7.2%に保持した食事とした。すべての参加者は、1日の食事エネルギーの3分の2に相当する食事を摂取し、通常治療を継続した。
主要エンドポイントは、16週の時点における血中の抗侵害受容性メディエータである17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)および頭痛インパクトテスト(HIT-6、頭痛がQOLに及ぼす影響を評価する6項目の質問票)とされた。頭痛の頻度は電子日誌で毎日評価した。
頭痛発現日数は、H3-L6食群でより少ない
182例(intention-to-treat集団、平均年齢38歳、女性88%)が登録され、このうち67%が慢性片頭痛の基準を満たした。H3食群に61例、H3-L6食群に61例、対照食群に60例が割り付けられた。
循環血中の17-HDHA値(log ng/mL)は、対照食群に比べH3食群およびH3-L6食群で上昇した(ベースラインで補正した対照食群との平均差[95%信頼区間[CI]]:H3食群0.7[0.4~1.1、p<0.001]、H3-L6食群0.6[0.2~0.9、p=0.001])。また、HIT-6スコアには、対照食群と比較してH3食群およびH3-L6食群で統計学的に有意な差は認められなかった(-1.5[-4.2~1.2、p=0.27]、-1.6[-4.2~1.0、p=0.23])。
対照食群と比較した1日の総頭痛発現時間(ベースラインで補正した対照食群との平均差[95%CI]:H3食群-1.3[-2.1~-0.5、p=0.001]、H3-L6食群-1.7[-2.5~-0.9、p<0.001])、1日の中等度~重度の頭痛発現時間(-0.7[-1.1~-0.3、p<0.001]、-0.8[-1.2~-0.4、p<0.001])、1ヵ月の頭痛発現日数(-2.0[-3.3~-0.7、p=0.003]、-4.0[-5.2~-2.7、p<0.001])はいずれも、H3食群およびH3-L6食群で短縮した。
1ヵ月の頭痛発現日数は、H3食群よりもH3-L6食群で2日減少しており(ベースラインで補正した平均差[95%CI]:-2.0[-3.2~-0.8、p=0.001])、食事中のリノール酸の量を少なくすれば、頭痛に関してさらなる利益が得られることが示唆された。
一方、H3食群とH3-L6食群では、血漿、血清、赤血球、免疫細胞中のn-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸、および侵害受容性オキシリピン誘導体のいくつかが変化したが、古典的な頭痛メディエータであるカルシトニン遺伝子関連ペプチドやプロスタグランジンE2には影響がなかった。
著者は、「本研究は、ヒトでは食事を変えることで痛みの治療が可能との生物学的に妥当な証拠をもたらした。これらの知見は、n-3系およびn-6系脂肪酸と、侵害受容に関連する因果メカニズムの存在を示唆し、ヒトの慢性疼痛の管理における新たなアプローチへの道を開くものである」と指摘している。
(ケアネット)
Ramsden CE, et al. BMJ. 2021;374:n1448.