新型コロナワクチンChAdOx1 nCoV-19(AZD1222)の2回接種は、1回目との接種間隔が44~45週と長い遅延接種のほうが、8~12週や15~25週の短い場合に比べ、接種後28日のIgG抗体価が高いことが示された。また、同ワクチン3回接種では、遅延2回接種後と同レベルの高い抗体価が得られること、およびT細胞反応を促進することが認められた。英国・オックスフォード大学のAmy Flaxman氏らが、進行中の2つのChAdOx1 nCoV-19無作為化試験について行った下位試験の結果で、Lancet誌オンライン版2021年9月1日号で発表した。COVID-19ワクチンをめぐっては、供給不足から1回目と2回目の接種間隔が長くなることに対して、一部の国から免疫低下の懸念が示されている。研究グループは、ChAdOx1 nCoV-19の単回投与後の免疫原性の持続性、2回目接種までの期間が延長した場合(44~45週)の免疫、2回目投与から28~38週後にブースター接種を行った3回接種の反応を評価した。
18~55歳に、1~2回目接種間隔、3回目接種の反応原性・免疫原性を調査
下位試験は、英国で行われている新型コロナワクチンChAdOx1 nCoV-19の第I/II相単盲検無作為化対照試験(COV001)の被験者で、同ワクチン(1回当たり5×10
10ウイルス粒子量)の1~2回接種を受けた18~55歳のボランティアを対象とした。2回目遅延接種(初回接種の44~45週後)、または3回目接種(2回接種の28~38週後)を受けた被験者について、反応原性と免疫原性を調べた。
対照として、同I/II相試験(COV001)またはII/III相試験(COV002)で、ChAdOx1 nCoV-19の1~2回接種(1回当たり5×10
10ウイルス粒子量)を受けた被験者のデータを比較した。
接種後28日抗体価、接種間隔8~12週923EU、44~45週3,738EU
2021年3月11日~21日に、90例が同ワクチン3回目ブースター接種の下位試験に登録された。うち80例について反応原性を、75例について抗体価を、15例についてT細胞反応を調べた。
また、同ワクチン2回接種者321例のうち、1回目接種との間隔8~12週が83%、15~25週が7%、44~45週が9%で、全員について反応原性を調べた。免疫原性については261例について調べ、2回目接種までの間隔の内訳は、8~12週が44%、15~25週が44%、44~45週が11%だった。
ワクチン単回接種の480例については、接種後44~45週までの免疫原性を調べた。1回接種後の約320日に測定した抗体価は、ベースラインに比べ高いレベルを維持していた(ELISA単位(EUs)によるGMTは66.00 EUs[95%信頼区間[CI]:47.83~91.08]vs.1.75 EUs[1.60~1.93])。
1回接種後44~45週で2回目接種を受けたのは32例で、うち30例が免疫原性と反応原性の解析に包含された。2回目接種28日後の抗体価は、1~2回の接種間隔が長い群が、短い群に比べ高かった(総IgG抗体価中央値:接種間隔8~12週が923 EUs[IQR:525~1,764]、15~25週が1,860 EUs[917~4,934]、44~45週が3,738 EUs[1,824~6,625])。
3回接種群について(評価対象はサンプル入手できた73例[81%])は、接種完了28日後の抗体価(総IgG中央値)は3,746 EUs(IQR:2,047~6,420)と、2回接種群の同1,792 EUs(899~4,634)に比べ有意に高値だった(Wilcoxon符号順位検定のp=0.0043)。またT細胞反応についても、3回接種直前から直後にかけて、反応性中央値は200 SFU/100万PBMC(IQR:127~389)から399 SFU/100万PBMC(314~662)に増加した(Wilcoxon符号順位検定のp=0.012)。
反応原性は、遅延2回接種群と3回接種群で、いずれも初回接種後に比べ低かった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)