米国タフツ・メディカルセンターのLeseley A. Inker氏ら研究グループが、推算糸球体濾過量(eGFR)の算出に、血清クレアチニンとシスタチンCを組み込み人種項目を除外した新たなeGFR算定式を構築した。同算定式は、血清クレアチニンまたはシスタチンCのいずれかのみを用いて人種項目を除外した新eGFR算定式よりも、予測がより正確で、黒人と非黒人との差も小さかったという。従来のeGFR算定式は、黒人か否かの項目を含んでいるが、人種は社会的要素で生物学的要素ではなく、人種内の多様性を無視するとして、算定式を精査する必要性が高まっていた。NEJM誌オンライン版2021年9月23日号掲載の報告。
23試験を基に新しい算定式を構築、12試験で検証
研究グループは、eGFRの算定に血清クレアチニンを用いた10試験(被験者総数8,254例、黒人31.5%)と、血清クレアチニンとシスタチンCを用いた13試験(同5,352例、黒人39.7%)を基に、人種項目を除外した算定式を構築した。
検証データセットは12試験(同4,050例、黒人14.3%)で、新たな算定式によるeGFRと実測GFRを比較した。
新eGFR算定式と従来eGFR算定式を用いて、米国成人の慢性腎臓病(CKD)の有病率とGFRステージを予想した。
従来の人種を含む算定式、eGFRが黒人の実測GFRを過大に予測
検証データセットにおいて、年齢、性別、人種を含む従来の血清クレアチニンを用いたeGFR算定式では、eGFRが黒人の実測GFRを過大に予測していることが認められた(過大予測の中央値:3.7mL/分/1.73m
2体表面積、95%信頼区間[CI]:1.8~5.4)。非黒人でも程度は小さいが同様の傾向が認められた(中央値:0.5mL/分/1.73m
2体表面積、0.0~0.9)。
また従来のeGFR算定式から黒人であるとの補正項目を除外すると、eGFRは黒人の実測GFRを過小に予測することが認められた(過小予測の中央値:7.1mL/分/1.73m
2体表面積、5.9~8.8)。
さらに、年齢、性別を含み人種を除外した新eGFR算定式では、eGFRが実測GFRに比べ、黒人で過小に予測され(中央値:3.6mL/分/1.73m
2体表面積、1.8~5.5)、非黒人では過大に予測された(中央値:3.9mL/分/1.73m
2体表面積、3.4~4.4)。すべてのGFR算定式で、黒人・非黒人ともに、eGFRの85%以上が実測GFR値の30%内に当てはまった。
血清クレアチニンとシスタチンCを用いて人種を除外した新eGFR算定式は、血清クレアチニンのみを用いた新eGFR算定式に比べ、より正確で人種間の差も小さかった。
米国成人のCKD有病率についても、血清クレアチニンのみを用いた新eGFR算定式で、従来eGFR算定式に比べて黒人の予測は上昇し、非黒人では同程度または低下することが認められた。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)