体重に関する自己認識と、医療従事者が用いる定義は対応しないことが多い。その問題に関して10年ほど前までは、摂食障害へのリスクから若い女性について重点が置かれていたが、現在は体重超過・肥満の人々の間に関心が向けられるようになっている。これらの人々は体重超過であるとの認識ができていないと指摘されているからだが、ロンドン大学疫学公衆衛生部門、癌研究英国健康行動調査センターのF Johnson氏らの調査によって、「体重増の認識はあるが体重増への問題認識が薄れている」ことが明らかにされた。BMJ誌2008年7月10日号掲載より。
10年の間の体重と体重自己認識の変化を調査
調査は8年間にわたるイギリスの人々の体重超過に対する認識の変化を検討したもので、1999年3月に行われた統計局(ONS)による家庭調査(郵便番号でランダムに調査家庭を抽出しインタビュー)と、2007年5月に行われた市場調査局(BMRB)による家庭調査(無作為に抽出された83エリアで面談調査)の各結果を比較して行われた。
参加者は1999年調査が男性853例、女性944、2007年調査が男性847例、女性989例。
主要評価項目は、参加者が報告した体重と身長、および自身の体重を低体重から肥満までのスケールのうち、いずれに分類していたか、とした。
肥満者の増加がかえって安心感を
1999年調査よりも2007年調査時の自己申告の体重は劇的に増加していた。
また「体重超過である」との認識も有意に上昇していたが、1999年時点では、体重超過の人の81%がBMI値を用いてきちんと体重超過を認識していたのに対し、2007年時点ではその割合が75%に低下していた。
Johnson氏は「健康体重へのメディア報道やキャンペーンにもかかわらず、体重超過・肥満の人の体重への感受性、問題意識が低下してしまった。体重コントロールを促すのは容易ではなくなっている」と結論。その背景として、社会全体に肥満者が増えたこと、メディア報道やキャンペーンで超肥満者の映像が流されたことが、かえって人々の間に「間違った安心感」が広がり問題認識を低下させてしまったと指摘している。