中等度リスクの急性冠症候群への早期冠動脈造影CTは有効か/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2021/10/19

 

 急性胸痛で救急診療部を受診し、急性冠症候群および続発する臨床イベントのリスクが中等度の患者において、早期の冠動脈造影CT検査は、冠動脈への治療的介入全般および1年後の臨床アウトカムに影響を及ぼさず、侵襲的冠動脈造影の施行率は減少させたものの、入院期間はわずかに延長したとの研究結果が、英国・エディンバラ大学のAlasdair J. Gray氏らが実施したRAPID-CTCA試験で示された。研究の詳細は、BMJ誌2021年9月29日号に掲載された。

英国37病院の無作為化対照比較試験

 研究グループは、急性胸痛がみられ急性冠症候群のリスクが中等度の患者への早期冠動脈造影CT検査は、1年後の臨床アウトカムを改善するかの検証を目的に、非盲検無作為化対照比較試験を行った(英国国立健康研究所[NIHR]医療技術評価[HTA]プログラムの助成を受けた)。本試験には、英国の37の病院が参加し、2015年3月~2019年6月の期間に参加者が登録された。

 対象は、急性冠症候群が疑われるか、急性冠症候群と暫定診断され、冠動脈性心疾患の既往歴を1つ以上有するか、心筋トロポニン上昇、または心電図異常が認められる成人患者であった。被験者は、早期冠動脈造影CT+標準治療を受ける群、または標準治療のみを受ける群に無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは、1年後の全死因死亡または非致死的心筋梗塞(1型[血栓症に伴う自然発症]および4b型[ステント血栓症に起因])とされた。

 1,748例が登録され、造影CT群に877例、標準治療群に871例が割り付けられた。全体の平均年齢は61.6(SD 12.6)歳、64%が男性で、平均GRACEスコアは115点だった(23%が>140点)。34%に冠動脈性心疾患の既往歴があり、57%に心筋トロポニン上昇、61%に心電図異常が認められた。

 造影CT群のうち、実際に早期冠動脈造影CT検査を受けたのは767例(87.5%)で、無作為割り付けからCT施行までの時間中央値は4.2時間(IQR:1.6~21.6)であった。CT検査により、23%で正常冠動脈、29%で非閉塞性病変、47%で閉塞性病変が同定された。

血行再建術、薬物療法、予防治療の変更にも影響はない

 主要エンドポイントは、造影CT群が5.8%(51例)、標準治療群は6.1%(53例)で発生し、両群間に有意な差は認められなかった(補正後ハザード比[HR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.62~1.35、p=0.65)。

 一方、侵襲的冠動脈造影検査の施行率は、造影CT群が54.0%(474例)と、標準治療群の60.8%(530例)に比べて低かった(補正後HR:0.81、95%CI:0.72~0.92、p=0.001)。

 また、両群間で、冠動脈血行再建術(補正後HR:1.03、95%CI:0.87~1.21、p=0.76)や入院での急性冠症候群に対する薬物療法(補正後オッズ比[OR]:1.06、95%CI:0.85~1.32、p=0.63)、退院時の予防治療の変更(補正後OR:1.07、95%CI:0.87~1.32、p=0.52)に差はなかった。

 入院期間中央値は、造影CT群が2.2日(IQR:1.1~4.1)と、標準治療群の2.0日(1.0~3.8)に比べ延長した(Hodges-Lehmann推定量で0.21日[95%CI:0.05~0.40、p=0.009]の増加)。

 著者は、「これらの知見は、急性胸痛がみられ急性冠症候群のリスクが中等度の患者において、1年後の臨床イベントを低減する戦略としての早期冠動脈造影CTの日常診療での使用は適切でないことを示唆する」とまとめ、「冠動脈造影CTの患者満足度(補正後OR:1.25、95%CI:1.02~1.53、p=0.03)は高く、これは造影CTが患者の臨床的な病態を迅速に評価し、担当医の診断の確実性を強化したことを反映していると考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)