左室駆出分画低下や肺うっ血を伴う心筋梗塞の患者において、サクビトリル・バルサルタンはラミプリルと比べ、心血管死・心不全リスクを低下しなかったことが、米国・ハーバード・メディカル・スクールのMarc A Pfeffer氏らが約5,700例を対象に行った、多施設共同無作為化二重盲検試験で示された。症候性心不全の患者において、サクビトリル・バルサルタンはACE阻害薬と比べて入院や心血管死のリスクを低下することが示されている。一方で、急性心筋梗塞の患者を対象とした比較検討は行われていなかった。NEJM誌2021年11月11日号掲載の報告。
心不全歴のない心筋梗塞患者を対象にサクビトリル・バルサルタンとラミプリルを比較
研究グループは、心筋梗塞を発症し、左室駆出分画低下や肺うっ血、またはその両方を伴う、心不全歴のない患者を無作為に2群に分け、推奨された治療に加え、一方にはサクビトリル・バルサルタン(サクビトリル97mg+バルサルタン103mg、1日2回)、もう一方にはラミプリル(5mg、1日2回)をそれぞれ投与した。
主要アウトカムは、心血管系の原因による死亡または心不全の発症(外来の症候性心不全または入院に至った心不全)で、いずれか先に発生したほうとした。
サクビトリル・バルサルタン群とラミプリル群で主要アウトカムは同等
被験者は計5,661例で、サクビトリル・バルサルタン群に2,830例、ラミプリル群に2,831例が無作為化された。
中央値22ヵ月の追跡期間中の主要アウトカム発生は、サクビトリル・バルサルタン群338例(11.9%)、ラミプリル群373例(13.2%)で有意差は見られなかった(ハザード比[HR]:0.90、95%信頼区間[CI]:0.78~1.04、p=0.17)。
心血管系の原因による死亡または心不全による入院の発生も、サクビトリル・バルサルタン群308例(10.9%)、ラミプリル群335例(11.8%)で有意差はなかった(HR:0.91、95%CI:0.78~1.07)。心血管系の原因による死亡のみの比較でも、サクビトリル・バルサルタン群168例(5.9%)、ラミプリル群191例(6.7%)で有意差はなく(0.87、0.71~1.08)、全死因死亡もサクビトリル・バルサルタン群213例(7.5%)、ラミプリル群242例(8.5%)で有意差はなかった(0.88、0.73~1.05)。
有害事象による治療中断は、サクビトリル・バルサルタン群357例(12.6%)、ラミプリル群379例(13.4%)だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)