早期乳がんの外来化学療法中の毒性管理について、プロアクティブに電話で介入する方法は、救急部門の受診や入院の減少に結び付かなかったことが、カナダ・University Health NetworkのMonika K. Krzyzanowska氏らが行った検討で示された。がん化学療法中は、救急部門の受診や入院は一般的であり、外来で適切にサポートすれば予防できる可能性が示唆されているが、これまで遠隔管理の大規模な検討は限定的であった。結果を踏まえて著者は、「COVID-19パンデミックにより遠隔ケアが急速に増加しており、がん治療中の患者の遠隔管理について、実践可能な戦略を確立することはとくに重要な課題である」と述べている。BMJ誌2021年12月8日号掲載の報告。
介入群vs.通常ケア、化学療法中の救急部門受診/入院回数を検証
研究グループは、早期乳がんの化学療法中の毒性管理について、プロアクティブな遠隔管理の効果を評価する、プラグマティックなクラスター無作為化試験を行った。
カナダ、オンタリオ州の20のがんセンターを、共変量制限付き無作為化法にて、毒性の遠隔管理を行う(介入)群または通常ケアを行う(対照)群に割り付けた。被験者は、各センターで早期乳がんによりアジュバント化学療法またはネオアジュバント化学療法を受けた全患者。また、各センターで25例に、アウトカムの質問票に回答してもらった。
介入群には、各化学療法サイクル後の2つの時点で、看護師によるプロアクティブかつ標準化された一般的な毒性の管理が電話にて行われた。
主要評価項目は、化学療法全コース中の、クラスターレベルでみた患者1人当たりの救急部門受診回数または入院回数の平均値で、ルーチンに利用可能な健康管理データを用いて評価した。また、患者の自己申告によるアウトカムには、毒性、自己効力感、QOLなどが含まれていた。
両群間で有意差なし
被験者のベースライン特性は、介入群(944例)、対照群(1,214例)で類似していた。65歳超の被験者は22%で、占有率(各センターで介入を受けた患者の割合)は、50~86%であった。
患者1人当たりの救急部門受診/入院回数の平均値は、介入群0.91(標準偏差[SD] 0.28)、対照群0.94(0.40)だった(p=0.94)。47%(1,014/2,158例)が、化学療法中に1回以上、救急部門受診/入院を経験した。
患者が自己申告するアウトカム質問票に回答した580例において、Grade3の毒性を1回以上経験したと報告したのは、介入群48%(134/278例)、対照群58%(163/283例)であった。自己効力感、不安、うつ症状について差は認められなかった。また、ベースラインと比較した、がん治療試験の機能評価のアウトカム指数の低下は、介入群6.1ポイント、対照群9.0ポイントであった。
(ケアネット)