特発性拡張型心筋症、家族の有病率30%・罹患リスク19%/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2022/02/16

 

 特発性拡張型心筋症(DCM)は家族内での発症がみられるため、リスクのある家族構成員を早期に発見することで、末期の病態に至る前に治療開始の機会をもたらす可能性があるが、米国ではDCMの家族内の有病率などの詳細なデータは知られていないという。米国・タフツ大学のGordon S. Huggins氏らは、今回、米国のDCMコンソーシアム参加施設で調査(DCM Precision Medicine Study)を行い、DCM患者の家族の約30%がDCMに罹患しており、家族が80歳までにDCMに罹患するリスクは19%と推定した。研究の詳細は、JAMA誌2022年2月1日号で報告された。

米国の25施設の横断研究

 本研究は、DCM発端者の家族のDCM有病率および第1度近親者における人種/民族別、年齢別のDCM累積リスクの評価を目的とする家族ベースの横断研究であり、米国の心不全プログラムに参加する25施設のコンソーシアムによって実施された(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成を受けた)。

 対象は、DCM患者(発端者)とその第1度近親者であった。DCM発端者は、通常の臨床的原因を除外したうえで、左室収縮機能障害(LVSD)と左室拡大(LVE)が認められる患者と定義された。2016年6月7日に参加者の登録が開始され、DCM発端者の登録は2020年3月15日に、家族の登録は2021年4月1日に終了した。

 主要アウトカムは、家族性DCMおよび広義の家族性DCMの発現とされた。家族性DCMは、少なくとも1人の第1度近親者にDCMが認められる場合、広義の家族性DCMは、少なくとも1人の第1度近親者にDCM、あるいは原因不明のLVSDまたはLVEが認められる場合と定義された。

黒人発端者は白人よりも有病率が高い

 試験には発端者1,220例(年齢中央値52.8歳[IQR:42.4~61.8]、女性43.8%、黒人43.1%、ヒスパニック系8.3%、第1度近親者数中央値4人[IQR:3~6])が登録され、1,693例の第1度近親者でDCMのスクリーニングが行われた。1家族当たり、生存している第1度近親者のうち中央値で28%(IQR:0~60)が、スクリーニングを受けた。

 発端者における家族性DCMの粗有病率は全体で11.6%、広義の家族性DCMの粗有病率は全体で24.1%であった。米国の典型的な高度心不全プログラムで、生存する第1度近親者のすべてがスクリーニングを受けた場合の、発端者における家族性DCM有病率のモデルに基づく推定値は全体で29.7%(95%信頼区間[CI]:23.5~36.0)で、広義の家族性DCM有病率のモデルに基づく推定値は全体で56.9%(50.8~63.0)だった。

 家族性DCM有病率の推定値は、黒人の発端者が白人の発端者よりも高かった(39.4% vs.28.0%、群間差:11.3%、95%CI:1.9~20.8)が、ヒスパニック系と非ヒスパニック系の発端者の間に有意な差は認められなかった(28.6% vs.30.0%、-1.4%、-15.9~13.1)。

 登録時の年齢別の疾患の状態に基づく、米国の典型的な高度心不全プログラムにおける第1度近親者のDCM推定累積リスクは、80歳までに19%(95%CI:13~24)に達し、部分的な表現型を含む広義の家族性DCMの有病率は80歳の時点で33%(95%CI:27~40)であった。

 また、DCMのハザードは、非ヒスパニック系黒人発端者の第1度近親者が、非ヒスパニック系白人発端者の第1度近親者よりも高かった(ハザード比:1.89、95%CI:1.26~2.83)。

 著者は、「これらの知見は、DCM患者では家族性DCMの有病率が実質的に高くなっており、第1度近親者ではDCMの生涯リスクが増大していることを示唆する」としている。

(医学ライター 菅野 守)