1~35歳の小児・若年成人における心臓突然死の原因について、剖検に加えて遺伝子検査を行うことで、特定できる事例が大幅に増加でき、冠動脈疾患に次いで遺伝性心筋症が多いことが判明した。また、原因不明例について遺伝的解析を行った結果、心疾患関連遺伝子の変異が3割弱で検出されたという。オーストラリア・シドニー大学のR.D. Bagnall氏らが、心臓突然死した小児・若年成人490例について前向きに調査し明らかにしたもので、NEJM誌2016年6月23日号で発表した。
原因不明事例について59種以上の心臓関連遺伝子変異を分析
研究グループは、2010~12年にオーストラリアとニュージーランドで心臓突然死した1~35歳の小児・若年者490例について、臨床記録、人口統計学的情報、剖検情報を前向きに調査し、その原因を追求した。
毒物学的・病理組織学的調査を含む包括的な剖検の結果、原因が特定できなかった心臓突然死については、少なくとも59種類の心臓関連遺伝子の解析を行い、臨床的意義のある心臓関連遺伝子変異の特定を行った。
原因不明心臓突然死のリスク因子は「31歳未満」と「夜間死亡」
調査対象とした1~35歳の心臓突然死の年間発生率は、10万人当たり1.3例で、男性は72%だった。
心臓突然死の発生率は31~35歳で最も高く、10万人当たり3.2例/年だった。また原因不明の心臓突然死の発生率は16~20歳で最も高く、10万人当たり0.8例/年だった。
解剖の結果明らかになった心臓突然死の原因は、冠動脈疾患が24%と最も多く、次いで遺伝性心筋症が16%だった。被験者のうち31~35歳群では、心臓突然死の原因として冠動脈疾患が最も多かったが、それ以外の年齢群では、原因不明の心臓突然死が最も多く、全体の40%を占めていた。多変量解析の結果、性別と年齢を補正後、「31歳未満」と「夜間死亡」が、原因不明の心臓突然死の独立したリスク因子だった。
また、原因不明の心臓突然死で遺伝子検査を行った113例のうち、臨床的意義のある心臓関連遺伝子の変異が31例(27%)で認められた。さらに、原因不明の心臓突然死が見つかった症例の家族について調べた結果、13%で遺伝性心疾患の臨床的診断がついていたことが明らかになった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)