新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した65歳以上の高齢者は、急性期後に診療を要する持続的または新規の後遺症のリスクが高いことが、米国・Optum LabsのKen Cohen氏らによる後ろ向きコホート研究の結果、示された。後遺症は、呼吸不全、認知症、ウイルス感染後疲労を除くと、高齢者のウイルス性下気道疾患の後遺症と類似していたが、SARS-CoV-2感染後は、重要な後遺症が多岐にわたって発生することが明らかになったという。著者は、「後遺症のリスクは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した人で高いことが明らかで、いくつかの後遺症のリスクは男性、黒人、75歳以上で高かった。今回のデータは、高齢者におけるSARS-CoV-2感染急性期後の後遺症を定義し、これらの患者の適切な評価と管理に役立つと考えられる」とまとめている。BMJ誌2022年2月9日号掲載の報告。
65歳以上のSARS-CoV-2感染者と非COVID-19患者を比較
研究グループは、UnitedHealth Group Clinical Research Database(匿名化された診療報酬請求と外来患者の臨床検査結果が含まれる)を用い、COVID-19を発症した65歳以上の高齢者(2019年1月からSARS-CoV-2感染の診断日まで継続してメディケア・アドバンテージプランに加入していた人)について、傾向スコアマッチングにより特定したCOVID-19を発症していない3つの比較群(2020年群8万7,337例、2019年群8万8,070例、ウイルス性下気道疾患群7万3,490例)と比較した。2020年群は2020年において65歳以上で、COVID-19の診断を受けていない、またはPCR検査が陽性ではない集団、2019年群はCOVID-19流行前の2019年における65歳以上の集団、ウイルス性下気道疾患群は2017~19年にインフルエンザ・非細菌性肺炎・急性気管支炎・急性下気道感染症・急性下気道感染を伴う慢性閉塞性肺疾患と診断された65歳以上の集団であった。
主要評価項目は、COVID-19診断後21日以降における持続的/新規後遺症の有無(ICD-10コードで同定)とし、急性期後120日間の後遺症の過剰リスクについてリスク差およびハザード比を算出した。また、後遺症の発症率を、年齢、人種、性別およびCOVID-19による入院の有無別に解析した。
非COVID-19患者と比べて後遺症の発症は11%高い
SARS-CoV-2感染が診断された65歳以上の高齢者のうち、32%(87,337例中27,698例)が急性期後に持続的/新規後遺症のために医療機関を受診し、これは2020年群と比較して11%高かった。
呼吸不全(リスク差:7.55、95%信頼区間[CI]:7.18~8.01)、疲労(5.66、5.03~6.27)、高血圧(4.43、2.27~6.37)、記憶障害(2.63、2.23~3.13)、腎障害(2.59、2.03~3.12)、精神的診断(2.50、2.04~3.04)、凝固能亢進(1.47、1.2~1.73)、心調律異常(2.19、1.76~2.57)は、2020年群と比較してリスク差が大きく、2019年群との比較でも同様の結果が得られた。
一方、ウイルス性下気道感染症群と比較した場合、呼吸不全(リスク差[100人当たり]:2.39、95%CI:1.79~2.94)、認知症(0.71、0.3~1.08)、ウイルス感染後疲労(0.18、0.11~0.26)のみ増加が認められた。
入院を必要とした重症COVID-19患者は、ほとんどのリスクが顕著に増加したが、すべてが後遺症というわけではなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)