小児集中治療室(ICU)のスタッフに対する、診療現場における心肺蘇生法(CPR)訓練と心停止に関する生理学的デブリーフィングの複合的トレーニングの実施は、通常の心停止マネジメントと比べ、小児ICUにおける心停止患児の良好な神経学的アウトカムでの退院生存を、有意に改善しなかった。米国・ペンシルベニア大学のRobert M. Sutton氏らICU-RESUS and Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Healthなどの研究グループが、無作為化試験の結果を報告した。院内心停止患児の生存退院率は約40%で、CPR中の拡張期血圧の閾値達成と心肺再開後の収縮期血圧の目標達成が、アウトカムを改善する可能性が示唆されていた。JAMA誌2022年3月8日号掲載の報告。
18ヵ所の小児ICUでハイブリッド・ステップウェッジ・クラスター試験
研究グループは、米国の医療機関10施設にある18ヵ所の小児ICUを通じて、並行ハイブリッド・ステップウェッジ・クラスター無作為化試験「ICU-RESUS試験」を行った。
同試験では、無作為に2ヵ所の試験期間を継続的介入、2ヵ所を継続的コントロールに割り付け、6ヵ所はコントロールから介入へとステップウェッジに移行した。
介入期間には、ICU蘇生の質向上を目的に、(1)マネキンを使った診療現場におけるCPR訓練(各ユニット48回/月)、(2)心停止イベントに関する生理学的デブリーフィング(各ユニット1回/月)の2つのプログラムを行った(患児数526例)。コントロール期間には、通常の小児ICU心停止マネジメントを行った(患児数548例)。
主要アウトカムは退院時の良好な神経学的アウトカムで、小児脳機能カテゴリーのスコア(範囲:1[正常]~6[脳死または死亡])が1~3、またはベースラインからの変化なしと定義した。副次アウトカムは、生存退院率だった。
退院時の良好な神経学的アウトカム、生存退院率ともに両群で同等
2016年10月1日~2021年3月31日にかけて、小児ICUに入室した1,129例(年齢中央値0.6歳、女児44%)を対象に試験を開始し、うち1,074例を対象に主要解析を行った(最終追跡期間2021年4月30日)。
良好な神経学的アウトカムを有しての生存退院率は、介入群53.8%、コントロール群52.4%と両群で有意差はなかった(リスク差:3.2%[95%信頼区間[CI]:-4.6~11.4]、補正後オッズ比[OR]:1.08[95%CI:0.76~1.53])。
生存退院率についても、介入群58.0%、コントロール群56.8%と両群で有意差はなかった(リスク差:1.6%[95%CI:-6.2~9.7]、補正後OR:1.03[95%CI:0.73~1.47])。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)