デルタ株流行期前後の比較では患児のICU入院が多い/成育研・国際医研

提供元:ケアネット

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公開日:2022/02/02

 

 国立成育医療研究センターと国立国際医療研究センターの合同研究チームは、デルタ株流行期における小児新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院例の疫学的・臨床的な特徴を、デルタ株が流行する以前と比較検討した。今回、その結果を庄司 健介氏(国立成育医療研究センター)らのグループが発表した。

 この研究は、2020年10月~2021年5月までをデルタ株以前、2021年8月~10月までをデルタ株流行期とし、それぞれの期間に登録された18歳未満の小児COVID-19入院例1,299人(デルタ株以前:950人、デルタ株流行期:349人)を対象に実施。その結果、デルタ株流行期は、デルタ株以前に比べて患者年齢が低いこと(中央値7歳vs.10歳)、基礎疾患のある患者の割合が高いこと(12.6%vs.7.4%)、集中治療室(ICU)入院を要した患者が多いこと(1.4%vs.0.1%)などが明らかとなった。

 なお、研究では国内最大のCOVID-19レジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」を利用した。
(※本研究は、オミクロン株がまだ存在しなかった時期に実施されているため、その影響は検討できていないことなどに留意願いたい)

デルタ株流行期ではICU入院の小児患者が増加

【背景・目的】
 COVID-19の第5波では、小児患者数も増加したが、小児患者の臨床的特徴や重症度がデルタ株の流行により変化があったのか、どのような小児患者が重症化していたのかなどの情報は限られ、解明が求められていた。これらを明らかにすることを目的とした。

【研究対象・方法】
・研究対象:2020年10月~2021年5月(デルタ株以前)と2021年8月~10月(デルタ株流行期)の間にCOVIREGI-JPに登録された18歳未満のCOVID-19患者
・研究方法:COVIREGI-JPに登録されている、患者の背景や臨床経過、予後などのデータを集計・分析

【研究結果】
・期間中に研究対象となった18歳未満の患者はデルタ株以前950名、デルタ株流行期349名。
・入院患者の年齢の中央値はデルタ株以前が10歳、デルタ株流行期が7歳と、デルタ株流行期の方が若年化している傾向にあった。
・入院患者に占める無症状の患者の割合はデルタ株以前が25.8%、デルタ株流行期が10.3%と、デルタ株流行期にはより症状のある患者が多く入院していたことがわかった。
・ICUに入院した患者の数と割合は、デルタ株以前1名(0.1%)、デルタ株流行期5名(1.4%)と、いずれもデルタ株流行期で高かったことがわかった。症状があった患者に限って同様の解析を行ったところ、デルタ株以前1名(0.1%)、デルタ株流行期5名(1.6%)と患者全体での解析とほぼ同様の結果だった。
・ICUに入院した患者のうち、半数(3/6名)は基礎疾患(喘息または肥満)のある患者だった。

 研究グループでは、「今後、小児の入院適応やワクチン接種の対象などを考えていく上で、本研究の結果がその基礎データとして利用されることが期待できる」と感想を寄せ、「オミクロン株の与える影響など、引き続き検討していく必要があると考えられる」と研究の展望を語っている。また、「小児のCOVID-19患者の絶対数が増えると、集中治療を要するような小児患者も増えることが予想され、オミクロン株が流行している現在においても、小児患者について注意深く診ていくことが求められる」と注意を促している。

(ケアネット 稲川 進)