大うつ病エピソード(MDE)、物質使用障害(SUD)、あるいはその両方を抱えた米国成人の自己申告による喫煙率は、2006年から2019年にかけて有意に低下している。米国・国立衛生研究所(NIH)のBeth Han氏らが、探索的順次横断研究の結果を報告した。米国における予防可能な疾病・障害・死亡原因である喫煙は、減少傾向にある。しかし、精神疾患患者では喫煙率が高く、2014年までのデータを用いた研究において一般集団でみられた喫煙率低下は、精神疾患患者では観察されなかったことが示されていた。著者は、「精神疾患患者の喫煙率をさらに低下させるため、継続的な取り組みが必要である」とまとめている。JAMA誌2022年4月26日号掲載の報告。
全国調査に参加した約56万人のデータを解析
研究グループは、米国において2006~19年の薬物使用と健康に関する全国調査に参加した18歳以上の55万8,960例のデータを用い、DSM-IV-TR(精神疾患の診断・統計マニュアル第4版テキスト改訂版)に基づく過去1年間のMDEおよびSUDを有する人の喫煙率について解析した。
主要評価項目は、社会人口統計学的特性で補正した自己申告による過去1ヵ月間の喫煙である。
55万8,960例のうち、41.4%が18~25歳、29.8%が26~49歳で、女性は53.4%であった。
2006年から2019年にかけて、喫煙率はMDEで年間3.2%、SUDで年間1.7%低下
自己申告による過去1ヵ月間の喫煙率は、2006年から2019年にかけてMDEを有する成人では37.3%から24.2%へ(平均年間変化率:-3.2、95%信頼区間[CI]:-3.5~-2.8、p<0.001)、SUDの成人では46.5%から35.8%へ(-1.7、-2.8~-0.6、p=0.002)、MDEとSUDの両方を有する成人では50.7%から37.0%へ(-2.1、-3.1~-1.2、p<0.001)、いずれも有意に低下した。この有意な喫煙率低下は、アメリカ先住民/アラスカ先住民のMDE(p=0.98)またはSUD(p=0.46)では観察されなかったことを除き、年齢、性別、人種/民族のいずれのサブグループでもMDEおよびSUDともに認められた(すべてp<0.05)。
MDEを有する成人と有していない成人との間の喫煙率の差は、全体では11.5%から6.6%に有意に低下し、平均年間変化率は-3.4(95%CI:-4.1~-2.7、p<0.001)であった。平均年間変化率の有意な低下は、男性(-5.1、95%CI:-7.2~-2.9、p<0.001)、女性(-2.7、-3.9~-1.5、p<0.001)、18~25歳(-5.2、-7.6~-2.8、p<0.001)、50歳以上(-4.7、-8.0~-1.2、p=0.01)、ヒスパニック系(-4.4、-8.0~-0.5、p=0.03)、白人(-3.6、-4.5~-2.7、p<0.001)でも同様に確認された。
アメリカ先住民/アラスカ先住民における喫煙率は、2006~12年の間ではMDEの有無で有意差はなかったが、2013~19年の間ではMDEを有する成人で有意に高かった(群間差:11.3%、95%CI:0.9~21.7、p=0.04)。SUDの有無で比較した喫煙率の差は、女性で低下し、平均年間変化率は-1.8(95%CI:-2.8~-0.9、p=0.001)であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)