大腸内視鏡、医師の腺腫検出率と検査後がんリスクが相関/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2022/06/21

 

 大腸内視鏡検査は、大腸腺腫検出率(ADR)が高い医師が行うと、検出率の値の広い範囲にわたって、大腸内視鏡検査後の大腸がん(PCCRC)のリスクが有意に低く、PCCRCによる死亡も少ないことが、米国・Kaiser Permanente Bernard J. Tyson School of MedicineのJoanne E. Schottinger氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2022年6月7日号で報告された。

米国73.5万例と医師383人の後ろ向きコホート研究

 研究グループは、医師の大腸内視鏡によるADRと、PCCRCおよびPCCRCによる死亡との関連を評価する目的で、米国の3つの大規模ヘルスケアシステム(カイザーパーマネンテ北カリフォルニア[KPNC]、カイザーパーマネンテ南カリフォルニア[KPSC]、カイザーパーマネンテワシントン[KPWA])の統合データを用いて後ろ向きコホート研究を行った(米国国立がん研究所[NCI]のPopulation-based Research to Optimize the Screening Process[PROSPR]IIの助成を受けた)。

 2011年1月~2017年6月の期間に、3つのヘルスケアシステム傘下の43ヵ所の内視鏡センターに所属する、383人の医師(100件以上の大腸内視鏡検査の経験があり、スクリーニング検査として年間25件以上を行っている)による大腸内視鏡検査でがんが検出されなかった、50~75歳の患者73万5,396例が解析に含まれた。

 これら大腸内視鏡でがんが陰性であった患者の、暦年で前年のスクリーニング検査に基づき、各患者の担当医の腺腫検出率を調べた。腺腫検出率は、統計解析では連続変数として定義され、記述的解析では中央値と同じかより高い値または中央値未満の2つに分けられた。

 主要アウトカムはPCCRCであり、検査の陰性結果(大腸内視鏡のすべての適応)から少なくとも6ヵ月以降に診断され、がん登録で確定された大腸腺がんとされた。副次アウトカムは、PCCRCによる死亡などであった。

ADRの高い医師の患者はPCCRCのリスクが有意に低い

 73万5,396例の陰性の大腸内視鏡検査85万2,624件のうち、44万0,352件(51.6%)は女性患者で、全体の年齢中央値は61.4歳(IQR:55.5~67.2)であり、追跡期間中央値は3.25年(IQR:1.56~5.01)であった。243万5,707人年の追跡期間に、PCCRCが619件、PCCRC関連死は36件認められた。

 ADRの高い医師の患者は、ADRの値の広い範囲において、PCCRC(ADRの1%上昇ごとのハザード比[HR]:0.97、95%信頼区間[CI]:0.96~0.98)のリスクが有意に低く、3つのヘルスケアシステム地域別にみた場合も、すべてで有意な関連が認められた(KPNC:ADRの1%上昇ごとのHR:0.97[95%CI:0.96~0.98]、KPSC:0.97[0.96~0.99]、KPWA:0.96[0.93~0.99])。

 また、ADRが中央値(28.3%)未満に比べ中央値以上の医師では、PCCRCのリスクが有意に低かった(1万人年当たり1.79例vs.3.10例、7年のリスクの絶対差:1万件の検査陰性当たり-12.2件[95%CI:-10.3~-13.4]、HR:0.61[95%CI:0.52~0.73])。

 さらに、PCCRCのリスクは男性(ADRの1%上昇ごとのHR:0.97、95%CI:0.96~0.98)および女性(0.98、0.97~0.99)のいずれにおいても、高ADR医師の患者で有意に抑制され、性差による交互作用は認められず(pinteraction=0.18)、人種や民族によるリスクの差もなかった(pinteraction=0.60)。

 一方、PCCRC関連死(ADRの1%上昇ごとのHR:0.95、95%CI:0.92~0.99)のリスクも、ADRの高い医師の患者で有意に低かった。また、ADRが中央値未満に比べ中央値以上の医師では、PCCRC関連死のリスクが抑制されていた(1万人年当たり0.05例vs.0.22例、7年のリスクの絶対差:1万件の検査陰性当たり-1.2件[95%CI:-0.80~-1.69]、HR:0.26[95%CI:0.11~0.65])。

 著者は、「これらの知見は、大腸内視鏡検査の質の評価における推奨目標の設定に有益な情報をもたらす可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)