イタリアの5~11歳児への新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「BNT162b2」(ファイザー製)の有効性は、12歳以上と比べて新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染およびCOVID-19重症化について、いずれも低いことが示された。また、感染への有効性は2回接種後最大となるが、その後は低下する。イタリア・Istituto Superiore di SanitaのChiara Sacco氏らが行った、5~11歳児対象の試験では最大規模かつ米国外では初めてとなる検討で、2022年1月~4月に2回接種を受けた106万超のデータを後ろ向きに解析した。イタリアでは、ファイザー製ワクチンの承認から4ヵ月超(2022年4月13日時点)で5~11歳児の接種率は40%弱であったという。研究グループは、今後のワクチン接種方針と戦略を定義し公衆衛生担当部局に通知するために、オミクロン変異株(B.1.1.529)流行中における5~11歳児へのワクチン接種の有効性を推定する検討を行った。Lancet誌2022年6月30日号掲載の報告。
対SARS-CoV-2感染と対COVID-19入院・死亡への有効性を評価
研究グループは、イタリアの全国COVID-19サーベイランス・システムと全国ワクチン登録名簿をリンクして、SARS-CoV-2感染と重症COVID-19(入院または死亡)に対するBNT162b2ワクチンの有効性を評価する、後ろ向き集団解析を行った。
適格としたのは、SARS-CoV-2感染歴のない同国5~11歳児で、2022年1月17日~4月13日に追跡した。ワクチン接種データに一貫性がなく、試験開始前にSARS-CoV-2感染が診断された児、居住地に関する情報がない児は、解析から除外した。
ワクチン未接種の児を参照群とし、ワクチンの部分接種(1回接種)および完全接種(2回接種)の有効性を推算した。
感染予防効果、2回接種後0~14日で38.7%と最大も、43~84日後には21.2%に低下
2022年4月13日の時点で、2回接種を受けていたのは、試験に組み込まれた5~11歳児296万5,918人中106万3,035人(35.8%)であった。1回接種は13万4,386人(4.5%)、未接種は176万8,497人(59.6%)だった。
試験期間中に報告されたSARS-CoV-2感染は76万6,756例、重症COVID-19は644例(うち入院627例、IUC入室15例、死亡2例)だった。
全体的に、ワクチン2回接種の有効率は、対SARS-CoV-2感染が29.4%(95%信頼区間[CI]:28.5~30.2)、対重症COVID-19は41.1%(22.2~55.4)だった。ワクチン1回接種の有効率は、それぞれ27.4%(26.4~28.4)、38.1%(20.9~51.5)だった。
対SARS-CoV-2感染のワクチン有効性は、2回接種後0~14日で38.7%(95%CI:37.7~39.7)と最大化し、43~84日後には21.2%(同:19.7~22.7)へと低下した。著者は、「現行のプライマリワクチンサイクル(2回接種)の完遂後に、感染への有効性は低下すると思われる」と述べている。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)