急性期疾患の静脈血栓塞栓症予防、中用量の低分子ヘパリンが最適か/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2022/07/14

 

 急性期疾患で入院した成人患者への抗凝固薬は、症候性静脈血栓塞栓症のリスク低下と大出血リスクを考慮すると、中用量低分子量ヘパリンが最適と思われる見解を、オランダ・フローニンゲン大学のRuben J. Eck氏らが、被験者総数9万人超を対象としたシステマティック・レビューとネットワークメタ解析の結果、示した。未分画ヘパリン(とくに中用量)と直接経口抗凝固薬(DOAC)のプロファイルは最も不良であったという。BMJ誌2022年7月4日号掲載の報告。

エビデンスの質はCINeMAで評価

 研究グループは、急性期疾患で入院した患者において、静脈血栓塞栓症の予防を目的とした抗凝固薬投与のベネフィットと有害性を抗凝固薬の種別および投与量別に評価するシステマティック・レビューとネットワークメタ解析を行った。

 Cochrane CENTRAL、PubMed/Medline、Embase、Web of Science、臨床試験レジストリ、全国保健局データベースをデータソースとして2021年11月16日時点で検索した。適格試験は、急性期疾患で入院中の成人患者に対する静脈血栓塞栓症予防を目的に、低~中用量低分子量ヘパリン、低~中用量未分画ヘパリン、DOAC、五炭糖、プラセボ、または非介入を評価した公表/未公表の無作為化対照試験。

 ランダム効果・ベイジアンネットワークメタ解析に用いた主要アウトカムは4項目で、90日時点(またはそれに最も近い時点)の全死因死亡、症候性静脈血栓塞栓症、大出血、重篤な有害イベントだった。

 また、バイアスリスクは、コクランバイアスリスク2.0ツールで評価し、エビデンスの質はCINeMA(Confidence in Network Meta-Analysis)フレームワークでグレード付けした。

大出血リスク、中用量未分画ヘパリンが2.6倍、DOACが2.3倍

 44の無作為化試験、被験者総数9万95例が主要解析に含まれた。

 いずれの介入もプラセボとの比較において、全死因死亡を低下しなかった(エビデンスの質:低度~中等度)。

 症候性静脈血栓塞栓症の発症の軽減は、低いほうから五炭糖(オッズ比[OR]:0.32、95%信用区間[CrI]:0.08~1.07)、中用量低分子量ヘパリン(0.66、0.46~0.93)、DOAC(0.68、0.33~1.34)の順で、中用量未分画ヘパリン(0.71、0.43~1.19)が最も軽減する可能性が高かった(エビデンスの質:非常に低度~低度)。

 大出血については、中用量未分画ヘパリン(OR:2.63、95%CrI:1.00~6.21)、DOAC(2.31、0.82~6.47)は、最も発症を増大する可能性が高かった(エビデンスの質:低度~中等度)。

 重篤な有害イベントに関して、介入の違いによる差は認められなかった(エビデンスの質:非常に低度~低度)。

 プラセボではなく非介入との比較では、いずれの実薬も静脈血栓塞栓症および死亡のリスクに関して好ましい結果が示されたが、大出血については好ましい結果は示されなかった。これらの結果は、事前に規定した感度・サブグループ解析でも一貫していた。

 なお研究グループは、エビデンスの質が低度~中等度であること、事後処理の統計学的不一致などを主な理由として、今回の検討は限定的なものと述べている。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)