成人発熱患者に対する治療(解熱薬、身体冷却)は、死亡や重篤な有害事象のリスクに影響しないことが、スウェーデン・ルンド大学のJohan Holgersson氏らが実施したシステマティック・レビューとメタ解析で示された。これまでの試験は特定の患者群あるいは特定の発熱治療に焦点を当てたもので、統計学的な検出力に限界があり、発熱患者における発熱治療のリスクとベネフィットは不明であった。BMJ誌2022年7月12日号掲載の報告。
42試験、約5,000例についてメタ解析、サブグループ解析および逐次解析を実施
研究グループは、CENTRAL、BIOSIS、CINAHL、MEDLINE、Embase、LILACS、Scopus、Web of Science Core Collectionを検索し、2021年7月2日までに発表された、あらゆる原因による発熱成人患者の無作為化試験(発熱に対する治療と、プラセボ/偽治療の有無にかかわらず治療なしを比較した試験)を特定した。
著者2人が独立して研究の選択、データ抽出、バイアスリスクの評価を行った。主要評価項目は全死因死亡および重篤な有害事象、副次評価項目はQOLおよび非重篤な有害事象とした。メタ解析、サブグループ解析および逐次解析によりデータを統合し、GRADEアプローチを用いてエビデンスを評価した。
計42試験、5,140例が解析に組み込まれた。42試験の内訳は、解熱薬(計11種類)を評価した試験が23件、身体冷却11件、解熱薬と身体冷却の併用8件であった。
発熱治療は死亡リスクや重篤な有害事象のリスクに影響しない可能性
5,140例のうち、3,007例が重症、1,892例が非重症、3,277例が感染性発熱、1,139例が非感染性発熱の患者であった。
すべての試験でバイアスリスクが高いと評価された。メタ解析および逐次解析の結果、発熱に対する治療が死亡リスク(リスク比:1.04、95%CI:0.90~1.19、I
2=0%、p=0.62、16試験、エビデンスの確実性:高)、および重篤な有害事象のリスク(リスク比:1.02、95%CI:0.89~1.17、I
2=0%、p=0.78、16試験、エビデンスの確実性:高)を低下させるという仮説は棄却されることが示された。
QOLに関して評価した1試験では、発熱治療と対照介入との間に有意差は確認されなかった。
メタ解析および逐次解析により、発熱治療が非重篤な有害事象のリスクを低下させるという仮説は立証も棄却もできなかった(リスク比:0.92、95%CI:0.67~1.25、I
2=66.5%、p=0.58、4試験、エビデンスの確実性:非常に低い)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)