中国人の脳底動脈閉塞患者において、脳梗塞発症後12時間以内の静脈内血栓溶解療法を含む血管内血栓除去術は、静脈内血栓溶解療法を含む最善の内科的治療と比較して90日時点の機能予後を改善したが、手技に関連する合併症および脳内出血と関連することが、中国科学技術大学のChunrong Tao氏らが中国の36施設で実施した医師主導の評価者盲検無作為化比較試験の結果、示された。脳底動脈閉塞による脳梗塞に対する血管内血栓除去術の有効性とリスクを検討した臨床試験のデータは限られていた。NEJM誌2022年10月13日号掲載の報告。
発症後12時間以内の症例で、90日後のmRSスコア0~3達成を比較
研究グループは、18歳以上で発症後推定12時間以内の脳底動脈閉塞による中等症~重症急性期虚血性脳卒中患者(NIHSSスコアが10以上[スコア範囲:0~42、スコアが高いほど神経学的重症度が高い])を、内科的治療+血管内血栓除去術を行う血管内治療群と内科的治療のみを行う対照群に2対1の割合で無作為に割り付けた。
内科的治療は、ガイドラインに従って静脈内血栓溶解療法、抗血小板薬、抗凝固療法、またはこれらの併用療法とした。血管内治療は、ステント型血栓回収デバイス、血栓吸引、バルーン血管形成術、ステント留置、静脈内血栓溶解療法(アルテプラーゼまたはウロキナーゼ)、またはこれらの組み合わせが用いられ、治療チームの裁量に任された。
主要評価項目は、90日時点の修正Rankinスケールスコア(mRS)(範囲:0~6、0は障害なし、6は死亡)が0~3の良好な機能的アウトカム。副次評価項目は、90日時点のmRSが0~2の優れた機能的アウトカム、mRSスコアの分布、QOLなどとした。また、安全性の評価項目は、24~72時間後の症候性頭蓋内出血、90日死亡率、手技に関連する合併症などであった。
良好な機能的アウトカム達成、血管内治療群46%、対照群23%
2021年2月21日~2022年1月3日の期間に507例がスクリーニングを受け、このうち適格基準を満たし同意が得られた340例(intention-to-treat集団)が、血管内治療群(226例)と対照群(114例)に割り付けられた。静脈内血栓溶解療法は血管内治療群で31%、対照群で34%に実施された。
90日後の良好な機能的アウトカムは、血管内治療群104例(46%)、対照群26例(23%)で認められた(補正後率比:2.06、95%信頼区間[CI]:1.46~2.91、p<0.001)。症候性頭蓋内出血は、血管内治療群では12例(5%)に発生したが、対照群では発生しなかった。
副次評価項目については、概して主要評価項目と同様の結果であった。
安全性に関して、90日死亡率は、血管内治療群で37%、対照群で55%であった(補正後リスク比:0.66、95%CI:0.52~0.82)。手技に関連する合併症は、血管内治療群の14%に発生し、動脈穿孔による死亡1例が報告された。
(ケアネット)