2型糖尿病治療薬として開発中のLY3437943(グルカゴン、GIP、GLP-1の3つの受容体へのアゴニスト活性を有する単一ペプチド)について、第Ib相試験において安全性プロファイルは許容範囲であることが示され、薬物動態から週1回投与が適していることが示唆されたことを、米国・Eli Lilly and CompanyのShweta Urva氏らが報告した。「この所見は、グルコースと体重の強力な減少の薬力学的所見を示すものであるとともに、第II相試験を支持するものである」とまとめている。高血糖と肥満を有する2型糖尿病患者の治療には、多受容体アゴニストが短期および長期のアウトカムを改善することが示されている。LY3437943は、2型糖尿病および肥満関連の併存疾患の治療薬として開発が進められている。Lancet誌オンライン版2022年10月27日号掲載の報告。
LY3437943について、12週間の二重盲検プラセボ対照用量漸増無作為化試験
第Ib相試験は12週間にわたって、2型糖尿病患者におけるLY3437943の安全性、薬物動態および週1回の複数回投与の薬力学的所見を調べた、概念実証二重盲検プラセボ対照用量漸増無作為化試験。米国の4施設で、2型糖尿病の罹病期間が少なくとも3ヵ月以上、HbA1c値7.0~10.5%、BMI値23~50、安定体重(直近3ヵ月の変化が5%未満)の成人(20~70歳)患者を集めて行われた。
参加者を、双方向ウェブレスポンスシステムを用いて、LY3437943週1回皮下投与群、プラセボ投与群、デュラグルチド1.5mg投与群に割り付け、12週間治療を行った。また、5つの用量漸増コホートの検討が行われ、各コホート内で無作為化を行い、各コホートで最低9人の参加者がLY3437943を、3人がプラセボを、1例がデュラグルチド1.5mgを投与。2つの最高用量コホートの上位用量には、段階的用量漸増で到達した。
主要アウトカムは、LY3437943の安全性と忍容性。副次アウトカムは、薬力学および薬物動態特性であった。安全性の解析は、試験薬を少なくとも1回投与された全参加者で行い、薬物動態と薬力学は試験薬を少なくとも1回投与され評価データが入手できた全参加者で解析が行われた。
安全性を確認、12週時点で血漿中グルコース、HbA1c値は有意に減少
2019年12月18日~2020年12月28日に、スクリーニングされた210例のうち72例が登録され、試験薬の投与を少なくとも1回受け安全性の解析に包含された。15例がプラセボ、5例がデュラグルチド1.5mg、LY3437943は9例が0.5mg、9例が1.5mg、11例が3mg、11例が3/6mg、12例が3/6/9/12mgの投与を受けた。29例は試験を途中で中止した。
治療に伴う有害事象は、LY3437943群33例(63%)、デュラグルチド1.5mg群3例(60%)、プラセボ群8例(54%)が報告された。最も多く報告された治療に伴う有害事象は胃腸障害であった。
LY3437943の薬物動態は、用量比例で半減期は約6日であった。
12週時点で、プラセボで調整した1日平均血漿中グルコースは、3つのLY3437943最高用量群で、ベースラインからの有意な減少が認められた。最小二乗平均差はLY3437943の3mg群で-2.8mmol/L(90%信頼区間[CI]:-4.63~-0.94)、3/6mg群で-3.1mmol/L(-4.91~-1.22)、3/6/9/12mg群で-2.9mmol/L(-4.70~-1.01)であった。
プラセボで調整したHbA1c値も、3つの最高用量群でベースラインから有意に減少した。最小二乗平均差は3mg群で-1.4%(90%CI:-2.17~-0.56)、3/6mg群で-1.6%(-2.37~-0.75)、3/6/9/12mg群で-1.2%(-2.05~-0.45)であった。
プラセボで調整したLY3437943群の体重減少は用量に依存して認められ、3/6/9/12mg群では最大-8.96kg(90%CI:-11.16~-6.75)であった。
(ケアネット)