前立腺がんスクリーニング、MRI後標的生検のみは有用か?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2022/12/16

 

 前立腺特異抗原(PSA)高値者でのスクリーニングと早期発見に関して、系統的生検を避けMRIを用いた標的生検の実施は、過剰診断のリスクを半減するが、少数の患者で中リスクのがん発見が遅れるという代償を伴うことが、スウェーデン・Sahlgrenska University HospitalのJonas Hugosson氏らが行った無作為化試験「GOTEBORG-2試験」の結果、示された。前立腺がんのスクリーニングは過剰診断率の高さが難点で、住民ベースのスクリーニングに最適なアルゴリズムは明らかになっていない。NEJM誌2022年12月8日号掲載の報告。

系統的生検と、MRI後に疑わしい場合に標的生検のみ実施を比較

 研究グループは、PSA検査後、MRI検査陽性者に標的生検のみを行うスクリーニングアルゴリズムが、現在推奨されているスクリーニングと比較して過剰診断が少ないかどうかを検証した。Swedish Population Registerを用いて、2015~20年にスウェーデンのヨーテボリまたはその周辺の10の自治体に居住していた50~60歳の男性3万7,887例に対し、定期的PSAスクリーニングへの参加を促した。PSA検査を受け、試験への参加に同意した1万7,980例(47%)を、対照群、実験群1および2の3群に1対1対1の割合で割り付けた。

 対照群では、PSA値3ng/mL以上の男性について全例MRIによる評価と系統的生検を行い、前立腺画像報告データシステム(PI-RADS)version 2のスコアが3~5点の場合は標的生検を追加した。実験群1では、PSA値3ng/mL以上の男性について、MRIによる評価を行い、疑わしい病変が発見された場合に標的生検のみを行った。また、PSA値10ng/mL以上の場合は、MRIの結果にかかわらず系統的生検(±標的生検)を実施した。実験群2は、実験群1と同様であるが、MRI実施のPSAカットオフ値を1.8ng/mLとした。

 主要評価項目は、臨床的に重要でない前立腺がん(グリソンスコア3+3と定義)、副次評価項目は臨床的に重要な前立腺がん(グリソンスコア3+4以上と定義)とし、そのほかに安全性も評価した。

 本試験の主要目的は、PSA値3ng/mL以上の男性について、系統的生検を避けMRI陽性病変のみの標的生検の有用性を評価することであった。そのため本論では、対照群(5,994例)vs.実験群(1、2の計1万1,986例)のうち、PSA値3ng/mL以上男性に関するスクリーニングの分析結果のみが報告されている。

MRI後標的生検で過剰診断は半減するが、臨床的に重要ながんの検出も微減

 臨床的に重要でない前立腺がんと診断されたのは、実験群では計1万1,986例中66例(0.6%)、対照群では5,994例中72例(1.2%)で、群間差は-0.7ポイント(95%信頼区間[CI]:-1.0~-0.4)であった(相対リスク[RR]:0.46、95%CI:0.33~0.64、p<0.001)。

 臨床的に重要な前立腺がんの検出は、実験群110例(0.9%)、対照群68例(1.1%)であった(RR:0.81、95%CI:0.60~1.10)。

 系統的生検のみによって検出された臨床的に重要な前立腺がんは、対照群では10例診断された。臨床病期T1cが7例、T2aまたはT2bが3例であり、6例は主に積極的サーベイランスで管理され、3例は根治的前立腺摘除術、1例は放射線療法で治療された。

 重篤な有害事象は、両群共にまれ(0.1%未満)であった。

 なお、著者は研究の限界として、参加者の年齢が比較的若いこと、単施設での試験であり一般化は制限される可能性があること、経会陰生検や画像ガイド下生検など新しい生検技術がスクリーニングアルゴリズムの診断性能を改善するかどうかは不明な点などを挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 宮嶋 哲( みやじま あきら ) 氏

東海大学医学部外科学系腎泌尿器科学 主任教授