実臨床での一般的用量でサイアザイド系利尿薬のクロルタリドン(国内販売中止)とヒドロクロロチアジドを比較した大規模プラグマティック試験において、クロルタリドン投与を受けた患者はヒドロクロロチアジド投与を受けた患者と比べて、主要心血管アウトカムのイベントまたは非がん関連死の発生は低減しなかった。米国・ミネソタ大学のAreef Ishani氏らが、1万3,523例を対象に行った無作為化試験の結果を報告した。ガイドラインではクロルタリドンが1次治療の降圧薬として推奨されているが、実際の処方率はヒドロクロロチアジドが圧倒的に高い(米国メディケアの報告では150万例vs.1,150万例)。研究グループは、こうした乖離は、初期の試験ではクロルタリドンがヒドロクロロチアジドよりも優れることが示されていたが、最近の試験で、両者の効果は同程度であること、クロルタリドンの有害事象リスク増大との関連が示唆されたことと関係しているのではとして、リアルワールドにおける有効性の評価を行った。NEJM誌オンライン版2022年12月14日号掲載の報告。
非致死的心筋梗塞と非がん関連死の複合アウトカムの初回発生を比較
研究グループは、米国の退役軍人医療システムに加入する65歳以上で、ヒドロクロロチアジド(1日25mgまたは50mg)を服用する患者を無作為に2群に分け、一方にはヒドロクロロチアジドを継続投与、もう一方にはクロルタリドン(1日12.5mgまたは25mg)に処方変更し投与した。
主要アウトカムは、非致死的心血管イベント(非致死的心筋梗塞、脳卒中、心不全による入院、不安定狭心症による緊急冠動脈血行再建術)、および非がん関連死の複合アウトカムの初回発生とした。安全性(電解質異常、入院、急性腎障害など)についても評価した。
低カリウム血症の発生がクロルタリドンで有意に高率
計1万3,523例が無作為化を受けた。被験者の平均年齢は72歳、男性97%、黒人15%、脳卒中または心筋梗塞既往10.8%、45%が地方在住だった。また、1万2,781例(94.5%)がベースラインで、ヒドロクロロチアジド25mg/日を服用していた。各群のベースラインの平均収縮期血圧値は、いずれも139mmHgだった。
追跡期間中央値2.4年で、主要アウトカムイベントの発生率はクロルタリドン群10.4%(702例)、ヒドロクロロチアジド群10.0%(675例)で、ほとんど違いはみられなかった(ハザード比[HR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.94~1.16、p=0.45)。主要アウトカムの個別イベントの発生率も、いずれも両群で差はなかった。
一方で、低カリウム血症の発生は、クロルタリドン群(6.0%)が、ヒドロクロロチアジド群(4.4%)よりも有意に高率だった(HR:1.38、95%CI:1.19~1.60、p<0.001)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)