開発中の経口レムデシビル、ニルマトレルビル/リトナビルに非劣性/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2023/01/13

 

 重症化リスクの高い軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人患者において、VV116(重水素化レムデシビル臭化水素酸塩)の経口投与は、経口抗ウイルス薬ニルマトレルビル+リトナビル(商品名:パキロビッドパック)と比較して、持続的な臨床的回復までの期間に関して非劣性であり、安全性は良好であることが、中国・Shanghai Institute of VirologyのZhujun Cao氏らが実施した第III相無作為化観察者盲検比較試験の結果、報告された。VV116は、レムデシビルの経口抗ウイルス薬の1つとして中国で開発が進められている。これまで小規模試験で、陽性確定後5日以内の投与は通常ケアと比較してウイルス排出期間が短縮したことが示されていた。NEJM誌オンライン版2022年12月28日号掲載の報告。

VV116の有効性、持続的な臨床的回復までの期間を検証

 研究グループは、SARS-CoV-2のB.1.1.529(オミクロン)変異株流行期の2022年4月4日~5月2日に、重症化リスクの高い軽症~中等症の症状を有するCOVID-19成人患者を、VV116群またはニルマトレルビル+リトナビル群に無作為に割り付け、それぞれ5日間経口投与した。

 主要エンドポイントは、無作為化から持続的な臨床的回復までの期間(観察期間28日目まで)とし、持続的な臨床的回復とは、COVID-19に関連する全症状が2日間連続して軽減(11項目の症状のスコア[各項目のスコア範囲は0~3でスコアが高いほど重症であることを示す]の合計スコア[11項目の合計スコアの範囲は0~33]が0または1)、と定義した。また、非劣性マージンは、ハザード比(HR)の両側95%信頼区間(CI)の下限を0.8とした(HRが>1の場合、VV116のほうがニルマトレルビル+リトナビルより持続的な臨床的回復までの期間が短いことを示す)。

持続的な臨床的回復までの期間、VV116群4日vs.ニルマトレルビル+リトナビル群5日

 計822例が無作為化され、771例がVV116(384例)またはニルマトレルビル+リトナビル(387例)の投与を受けた。患者背景は、年齢中央値が53歳、女性が50.2%で、ほとんど(92.1%)が軽症COVID-19であり、ワクチン接種済み(ブースター接種含む)が4分の3を占めていた。主な重症化リスクは、60歳以上(37.7%)、高血圧を含む心血管疾患(35.1%)、肥満(BMI≧25)(32.9%)、喫煙(12.5%)、および糖尿病(10.1%)などであった。

 主要解析(データカットオフ日:2022年5月13日)で、持続的な臨床的回復までの期間に関して、ニルマトレルビル+リトナビルに対するVV116の非劣性が検証された(HR:1.17、95%CI:1.01~1.35)。最終解析(データカットオフ日:2022年8月18日)においても同様の結果が得られた(中央値:VV116群4日vs.ニルマトレルビル+リトナビル群5日、HR:1.17、95%CI:1.02~1.36)。

 最終解析において、持続的な症状消失までの期間(11項目のCOVID-19関連症状の各スコアが2日連続で0)、および無作為化からSARS-CoV-2検査が初めて陰性になるまでの期間は、両群間で差は認められなかった。28日までに死亡または重症COVID-19に進行した患者は、両群とも報告されなかった。

 有害事象の発現率は、VV116群67.4%、ニルマトレルビル+リトナビル群77.3%であり、VV116群が低値であった。Grade3または4の有害事象の発現率も同様であった(2.6% vs.5.7%)。

 なお、著者は、二重盲検試験ではなかったこと、オミクロン変異株亜種に感染した中国人が組み込まれていたこと、連続2日間の症状消失後に症状が再燃する可能性があることなどを研究の限界として挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 寺田 教彦( てらだ のりひこ ) 氏

筑波大学 医学医療系 臨床医学域 感染症内科学 講師

筑波メディカルセンター病院臨床検査医学科/感染症内科